Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション26 <教育に活かす> 消化器疾患診断に造影超音波は必要か?

(S286)

造影超音波による肝腫瘍の鑑別診断

Differential diagnosis of hepatic tumors by contrast-enhanced ultrasonography

熊田 卓1, 豊田 秀徳1, 多田 俊史1, 金森 明1, 乙部 克彦2, 今吉 由美2, 安田 慈2, 川島 望2, 竹島 賢治2

Takashi KUMADA1, Hidenori TOYODA1, Toshifumi TADA1, Akira KANAMORI1, Katsuhiko OTOBE2, Yumi IMAYOSHI2, Shigeru YASUDA2, ノゾミ KAWASHIMA2, Kenji TAKESHIMA2

1大垣市民病院消化器内科, 2大垣市民病院医療技術部診療検査科形態診断室

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【1,はじめに】
第2世代のソナゾイドTMでの造影超音波検査が可能となり,血管相,後血管相(クッパー相)ともに安定した画像が得られるようになった.今回,第2世代の超音波造影剤が出現したのを機会に,「肝腫瘤の超音波診断基準の改訂」小委員会が立ちあげられた.20年以上改定されていなかった肝腫瘤の質的診断のためのBモード所見の改定に加え,ドプラ所見,造影超音波所見が新設された.2010年の超音波医学2月号に「肝腫瘤の超音波診断基準(案)」が発表されている.本パネルでは診断基準の概要と造影超音波検査の有用性について述べる.
【2,肝腫瘍の造影超音波所見】
対象とした疾患は肝細胞癌(HCC),肝内胆管癌(胆管細胞癌),転移性肝腫瘍,肝細胞腺腫,肝血管腫,限局性結節性過形成(FNH)の6疾患で,血管相と後血管相(クッパー相)に分けられ,それぞれ特徴的な画像所見が記載されている.血管相はさらに動脈優位相(血管イメージと灌流イメージ)と門脈優位相に分けられている.表1に造影超音波の質的診断の基準を記載した.HCCは原発性肝癌取り扱い規約に準じて2cm以下のものと2cm超のものと塊状型に分類した.結節内の詳細な血流情報を取得することで質的診断が可能となる.また,後血管相は悪性度の評価に有用である.肝内胆管癌は動脈優位相では辺縁に血管影を認め,中央を突き抜ける線状の血管影を認める.転移性肝腫瘍の所見は原発巣,結節のサイズ,発育速度等に依存するが,後血管相での存在診断に威力を発揮する.肝血管腫においては極めて特徴的な画像を示しMRI等の他の画像診断の必要性は減少した.一部流速の早い肝血管腫も存在するが他の時相の所見を参考とすれば鑑別可能である.肝細胞腺腫は稀な腫瘍で動脈優位相血管イメージで,腫瘍境界から取り囲むように内部に細かい血管が流入するのが特徴である.FNHは動脈優位相は中心から辺縁に放射状に広がる血流を示し短時間で濃染する.後血管相では肝実質と同等もしくは高輝度となる.
【3,終わりに】
MDCT,EOB-MRIの出現で,肝腫瘍および肝全体の特徴的な画像が得られるようになり一般臨床での造影超音波の位置づけは決して高くないのが現状である.しかし時間分解能は他の画像診断をしのぎFNH,肝血管腫の診断には必須の検査である.また後血管相での悪性度診断,存在診断も重要性は極めて高い.