Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション17 <治療に活かす> 小膵癌:超音波検査を用いたステージⅠへのアプローチ

(S283)

小膵癌発見・診断のためのUSおよびCEUSの果たす役割

B mode ultrasonography and contrast enhanced-ultrasonography for small pancreatic cancer

祖父尼 淳

Atsushi SOFUNI

東京医科大学消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

膵癌は予後不良であり,予後改善のためには小膵癌,すなわち腫瘤径が2cm以下(TS1)のみならず膵内に留まる小膵癌(T1)を早期に発見・診断することが重要である.近年,各種画像診断の進歩,普及により膵癌に対する描出・診断能は向上した.しかしTS1膵癌の年次発見率の推移では,いまだ10%以下と20年前と著変なく早期発見・診断が向上しているとは言い難い.したがって従来の診断法のみならず新たな早期発見・診断法の開発や工夫が望まれている.その中でも対外式超音波の進歩により発見契機における重要性も報告されている.膵癌の発見契機に関する全国集計によれば,TS1膵癌の初発症状として腹痛が24.5%と最も多いが,18.1%が無症状で検査での異常所見が契機であったと報告されている.当科における膵癌187例における検討では,TS2以上の膵癌は症状を主体とした発見契機が上位を占める.一方,小膵癌症例では膵管拡張,血清膵酵素上昇などが上位を占め,下部胆管狭窄や膵嚢胞なども注意すべき所見であった.このように小膵癌では検査所見が発見契機となる場合が多く,早期発見のためには画像検査を主体とした検査を進めていくことが重要である.膵癌の画像診断として膵癌ガイドラインでも早期に行うことが推奨されている検査法がB mode USである.これは簡便かつ非侵襲的なスクリーニング検査法で集団検診にも用いられる.全国集計における膵癌発見契機となった画像診断法ではB mode USが40.1%と最も多く,TS1膵癌でも40.5%と高頻度であった.当科の膵癌115例における検討でもB mode USでの膵癌発見契機率は35.6%で,腫瘤描出率はTS2以上の膵癌で100%, TS1膵癌で70.0%であった.このようにB mode USは小膵癌発見の最も重要なスクリーニング検査である.しかし解剖学的な位置関係,患者の体型や検者の技能により描出能に差が出やすく,特にTS1膵癌に対するB mode USの存在診断率は21.4〜82%とも報告されている.しかも小膵癌では腫瘤そのものの描出は難しいことが多く,主膵管拡張や膵嚢胞,膵管分枝の限局性拡張,胆管拡張などの間接所見を拾い上げていくことが重要で,より空間分解能の高いモダリティを用いた精査へ進むことが可能となる.また危険因子として家族歴,合併疾患,嗜好,膵嚢胞性病変などが有意なものとしてあげられ,このような危険因子を保有する場合にも積極的にB mode USによるスクリーニング検査を行うことで小膵癌の発見率を向上させることが可能である.また膵内の低エコー腫瘤を呈するものとして膵癌以外に,膵内分泌腫瘍,転移性膵腫瘍,SPN,腫瘤形成性膵炎などがあり鑑別を要する.びまん性に膵が腫大している場合には,炎症によるものだけではなく膵全体癌の可能性もあるため注意を要する.腫瘤や異常な間接所見を描出し得たとしても鑑別診断に苦慮する場合も多く,正常膵とのコントラスト差を簡便に評価できる超音波造影剤を用いた造影超音波検査(CEUS)が有用となる.CEUSは低侵襲診断法で外来でも簡便に行うことのできる検査法である.しかもCTやMRI,EUS,ERCP等の検査をおこなう前に施行でき診断に重要な多くの情報が得られる.当科膵癌115例のCE-USにおける描出率は99%で,TS2以上では100%,TS1症例では95%,T1 症例では87.5%と高率であった.TS1/T1膵癌における染影態度は,hypovascularityが85%,hypo/isovascularityが5%,isovascularityが10%であった.CEUSはTS1/T1膵癌の描出のみならず染影態度を評価することで質的診断にも有用である.膵癌診療において,対外式超音波検査はスクリーニングから鑑別診断,進展度診断にいたるまで重要なモダリティのひとつである.