Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション17 <治療に活かす> 小膵癌:超音波検査を用いたステージⅠへのアプローチ

(S283)

小膵癌診断における内視鏡下超音波検査法(EUS)の現状

Current situation of EUS in the diagnosis of small pancreatic carcinoma

廣岡 芳樹1, 伊藤 彰浩2, 川嶋 啓揮2, 大野 栄三郎1, 伊藤 裕也2, 平松 武2, 中村 正直2, 後藤 秀実1, 2

Yoshiki HIROOKA1, Akihiro ITOH2, Hiroki KAWASHIMA2, Eizaburo OHNO1, Yuya ITOH2, Takeshi HIRAMATSU2, Masanao NAKAMURA2, Hidemi GOTO1, 2

1名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部, 2名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学

1Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
2007年の日本膵臓学会による膵癌の集計によれば,腫瘍径20mm以下(TS1)症例のうちStageⅠの5年生存率は54.6%であった.また,TS1症例がStageⅠであった割合は,膵頭部癌で15.3%,膵体尾部癌で33.3%と低率であった.一方,腫瘍径10mm以下の膵癌症例は62-75%がStageⅠに該当するという報告がある.近年明らかにされつつある膵癌のハイリスク群を囲い込むなどの努力がなされ,画像診断としては,主に経腹壁超音波検査法(US)による直接・間接所見が小膵癌発見の端緒になっている.USなどにより拾い上げられた症例を最終診断へ導く次のステップはEUSであると考えられる.EUSが小膵癌を如何に正確に診断できるかどうかがStageⅠ膵癌診断への鍵になる.B-mode画像の画質がEUSにおけるもっとも重要な要素であることは論を待たないが,ここでは,新しい手法であるITM(inflow time mapping)とR3DI-EUS(reversed 3 dimensional imaging EUS)の膵癌診断における有用性を検討した.
【方法】
(1) ITM:本法は造影EUSにおいて,造影剤が流入する経時的変化を造影剤が標的に到達した時間に従って色分けして示したものである.造影剤は当院IRBの承認のもとにSonazoidを使用した.TIC(time intensity curve)を用いた解析およびMTI(microbubble tracing image)と比較した.(2)R3DI-EUS:本法はEUSを用いた三次元画像の描出法の一つである.EUSによる3D画像の作成は内視鏡を用手的に移動させることによって行う.従って,現時点ではpositional informationを有していないが,標的と周囲構造物の相対的な位置関係は保たれている.R3DI-EUS画像は,用手移動によって作成した3D-EUS画像のエコー輝度を反転させることによって無エコー領域のみを描画したものである.R3DI-EUSによる胆管・膵管,脈管の描出について検討した.
【結果】
(1)ITM:TICを用いた膵癌の輝度解析では既報のように造影剤注入後に上昇したエコー輝度が早期に低下した.ITMでの検討は主に造影剤注入直後に限られるが,腫瘍中心部への緩徐で少量な造影剤の流入が1画面で描出され膵癌の特徴と思われた.(2)R3DI-EUS:拡張または狭窄した胆管・膵管がMRCP類似の画像として描出された.門脈・動脈などの血管と標的との関係が立体的に描出された.
【考案】
診断におけるEUSの最大の長所はその画質である.小膵癌診断におけるEUS-FNAの意義は不明であるが,病変の良好な描出なくしてEUS-FNAはあり得ない.一方,EUSにおけるハードウエアとソフトウエア両面での進歩は著しい.Elasticity imagingなども有力な診断手技であり,今後のEUS画像の更なる発展は小膵癌診断に寄与すると考える.