Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション9 <治療に活かす> 急性腹症における超音波検査の今日的意義:今超音波は不要か?

(S281)

急性腹症に対する超音波検査の位置付け

Positioning of ultrasonography for acute abdomen

中河原 浩史, 小川 眞広, 三浦 隆生, 塩澤 克彦, 阿部 真久, 松本 直樹, 森山 光彦

Hiroshi NAKAGAWARA, Masahiro OGAWA, Takao MIURA, Katsuhiko SHIOZAWA, Masahisa ABE, Naoki MATSUMOTO, Mitsuhiko MORIYAMA

駿河台日本大学病院内科

Internal medicine, Surugadai Nihon University Hospital

キーワード :

【目的】
急性腹症とは急激に腹痛が起こり急性の経過をたどる疾患の総称であり,消化器疾患以外にも泌尿器科や産婦人科疾患も含まれ,緊急手術を必要とする症例も存在する.急性腹症の画像検査には侵襲も少なく簡便に行える超音波検査が第一選択として考えられるため,当施設では急性腹症に対してはまず超音波検査を行い,必要に応じてCTなどの検査を追加している.そこで今回我々は,急性腹症で外来受診し超音波検査を行った症例に対して検討を行った.
【対象と方法】
対象は平成23年11月から平成24年10月の1年間に当施設を急性腹症で受診した211症例とした.平均年齢は53歳,男性103例,女性108例であった.対象症例の疼痛部位,超音波診断,腹部CTを行った症例についてはCT診断との相違症例についても検討を行った.
【結果】
疼痛部位は心窩部81例,右上腹部43例,左上腹部5例,臍部5例,右下腹部34例,正中下腹部9例,左下腹部12例,背部17例,腹部全体5例であった.超音波診断は心窩部痛では急性膵炎5例,胆石胆嚢炎及び胆泥4例,総胆管結石3例,腸閉塞2例,急性胃粘膜病変2例,膵癌1例,閉塞性黄疸1例,食道裂孔ヘルニア1例,急性肝炎1例,急性腸炎1例,異常なし60例であった.右上腹部では胆石,胆嚢炎15例,右尿管結石1例,異常なし27例であった.左上腹部痛は脾破裂1例,異常なし1例であり,臍部痛は急性腸炎3例で,異常なし2例であった.右下腹部痛では虫垂炎7例,憩室炎5例,急性腸炎6例,右腎癌1例,右水腎症1例,右卵巣嚢腫1例,胆石症1例,異常なし12例であった.正中下腹部痛は虚血性腸炎2例,骨盤内腫瘍1例,炎症性腸疾患1例,異常なし5例であった.左下腹部痛は憩室炎2例,左卵巣腫瘍1例,左尿管結石1例,急性腸炎1例,虚血性腸炎1例,異常なし6例であった.背部痛では右尿管結石1例,異常なし16例であった.腹部全体の痛みは急性腸炎1例,異常なし4例であった.対象症例で腹部CTも行った症例は79例あり,腫瘍性病変,虫垂炎や憩室炎,急性膵炎,腸閉塞などが含まれていた.超音波検査とCT検査で診断が不一致であった症例は15例みられた.超音波検査でのみ診断できた症例には,胆石症,尿管結石,急性肝炎があり,CTでのみ診断できた症例には憩室炎,急性膵炎,卵巣出血,卵巣腫瘍,骨盤内腹膜炎,尿管及び腎結石などがみられた.
【考察】
急性腹症に対して超音波検査は様々な腹部疾患を診断可能であり,特に疼痛部位を確認しながら患部を直接検査できることや,被曝がないため有用である.CT検査で診断に至らなかった胆石や尿管結石も存在したことから,急性腹症には超音波検査は必要であると考えられた.一方で超音波検査では診断できなった症例には骨盤内疾患が多くみられ,疼痛による腸管ガスの貯留や,手術痕により観察不良であった症例も含まれていた.今回の検討での超音波検査の感度90%,特異度97.7%,正診率94.8%であり,超音波検査は急性腹症の第一選択の検査になり得ると考えられた.今後は,急性腹症に対してはまず超音波検査を行い,必要に応じてCT検査を追加することがよいと思われた.