Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム4 <治療に活かす> 肝線維化の画像診断

(S273)

MRエラストグラフィ

MR Elastography

本杉 宇太郎

Utaroh MOTOSUGI

山梨大学放射線科

Radiology, University of Yamanashi

キーワード :

MRエラストグラフィ(MRE)はMR装置を用いて肝弾性率を測定する手法である.体外加振装置を用いて弾性波を体表から肝に伝搬させ,弾性波の波長を測定する.弾性波を用いて弾性率(剛性率)を測定する点は超音波エラストグラフィと同様であるが,伝播弾性波の波長測定方法に位相コントラスト法という手法が用いられている点がMREの特徴である.C型慢性肝炎症例を対象とした検討では,各線維化ステージの分別能はROC曲線下面積で0.97〜0.99と高い値を示した1).同一症例を対象としてフィブロスキャンとMREを比較した検討では,F2以上,F4の判別能において,MREはフィブロスキャンより有意に高い診断能を有していた.現在,線維化診断に利用できるツールは,超音波エラストグラフィ,MRE,血液学的線維化マーカーと非常に多岐にわたる.これらのうちどれが優れているか比較することは学問的には意義のあることかもしれない.しかし実際には各施設で利用できるツールは限られており,また複数のツールが利用できる状態ならすべてのツールを利用するであろう.その時必要なのは,優劣を決めることではなく複数のツールをうまく組み合わせることである.これにはベイズ理論を用いた線維化ステージ推定が有用である2).この方法ではある検査値が得られた時の線維化ステージの確率を計算することができる.例えばフィブロスキャンで20 kPaだった場合,F3の可能性は63%,F4の可能性は37%といった具合である.これにMRエラストグラフィが4.0 kPaだったという情報を加えると,両者を加味してF3の可能性は93%と計算される.現在利用可能なエラストグラフィはいずれも信頼性のあるツールであることが示されている.今後は,いかに複数のツールを組み合わせてより信頼性の高い診断を行うことができるかが焦点になるであろう.ベイズ理論による線維化ステージ推定の計算ソフトはWeb上で公開されている(http://yamarad.umin.ne.jp/bayesian/).
1)Ichikawa S, et al. Magn Reson Med Sci 2012; 11: 291-297
2)Motosugi U, et al. Hepatology 2012 Epub ahead of print