Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム3 <科学に活かす> 肝脂肪沈着の画像を科学する

(S267)

脂肪肝のCT診断

CT diagnosis for fatty liver

岡田 真広1, 2

Masahiro OKADA1, 2

1近畿大学医学部放射線診断学教室, 2横浜市立大学附属市民総合医療センター臨床研究推進センター

1Department of Radiology, Kinki University Faculty of Medicine, 2Clinical Research Advancement Center, Yokohama City University Medical Center

キーワード :

びまん性の肝脂肪沈着を認める場合,脂肪の沈着の程度に応じてCTでは低吸収(低濃度)をきたす.軽度な脂肪肝がびまん性に生じる場合は,脂肪肝があるかどうか気づかないこともあるが,まだら・結節状などの分布を示す場合には,時に肝腫瘍との鑑別が困難となることもある.近年,日本では食生活の欧米化や運動不足による肥満,糖尿病,脂肪肝などの生活習慣病が増加し,予後不良な非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と予後良好な脂肪肝からなる非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD)と呼称される病態が注目され,肝内脂肪評価に関する研究も盛んとなっている.NASHで注意しなければならない点は,単なる脂肪肝に比べ病気が進行性で治療に対する反応が悪く,肝硬変や肝細胞癌の発生が高率であるという事実である.肝脂肪浸潤を評価する非侵襲的画像診断には超音波,MRIやCTなどがあり,中でもCTは腹部画像診断において汎用される検査であり,かつ診断における客観性が高い.したがってCTでの脂肪肝の評価について知っておかなければならない.正常者の肝実質のX線吸収値は45-60HUとされる.脂肪は画像診断にとって特異的な成分であり,脂肪肝では脂肪の沈着の程度に応じて肝実質が低吸収化(低濃度化)する.そして脂肪沈着が高度になれば非造影CTでは門脈や肝静脈が相対的に高吸収(高濃度)として認識される.患者における検討で,肝の脂肪分30%と予想する非造影CTでのCT値は40HUとの報告がある.CTにおいて脂肪組織の判定は,関心領域(Region of interest; ROI)を設定してCT値を計測することにより脂肪の存在を示すマイナス値を示すことで決定される.しかし脂肪が高密度で存在している場合はCT値がマイナスになることはあるが,通常びまん性に脂肪が沈着していく場合には,元来肝が持っているCT値を下げていくことになるため(マイナスを示すことはなく),CT値のみで判定するというよりも他の臓器,たとえば脾臓とのコントラストをチェックすることが一般的である.非造影CTでは肝実質性変化をもたない(正常肝)症例で肝実質は脾臓の濃度(吸収値)よりも約10HU高いとされ,肝に脂肪浸潤が生じた際には脾臓よりも低い濃度となる.これは簡便な指標となるため,脾臓を脂肪肝の判定基準(対照臓器)として利用することが多い.Dual energy CTは最近普及してきたCT装置であり,異なるX線エネルギー帯域に対する線減弱係数の違いを画像情報に加えることが可能となる.臨床的には大きく2つの利点,すなわち物質の同定と画質の向上が期待されている.現在のところ,脂肪肝の定量評価にDual energy CTが使用できるか否かは未知数であるが,我々はDual energy CTの撮影データから得られた物質弁別画像によって肝実質の脂肪変性の程度を推定可能かどうか検証している.中間結果ではあるが,ファントム実験や患者の撮像において,Dual energy CTを用いた物質弁別技術は肝脂肪変性の半定量的評価を可能とすることがわかった.本講演では脂肪肝のCT診断という観点から,脂肪肝のCT画像所見に関して主として述べ,Dual energy CTを用いた脂肪肝画像解析についても触れたい.