Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション21 <治療に活かす> 3D経食道エコーで見る弁膜症手術のためのポイント

(S245)

3DTEE による機能性MR手術のためのポイント

Three dimensional transesophageal echocardiographic assessment of mitral valve structure for successful surgery for functional mitral regurgitation

尾長谷 喜久子

Kikuko OBASE

川崎医科大学循環器内科学

Cardiology, Kawasaki Medical School

キーワード :

3次元経食道心エコー図法(3DTEE)は僧帽弁構造の観察に最適な画像診断法である.中部食道からの観察では僧帽弁弁尖,弁輪が,胃からの観察では弁下構造の詳細が明瞭に描出される.取り込んだ3D volume画像から2D画像を切り出すMPR(Multi planar reconstruction) モードは通常の2DTEEでは描出し得ない断面を切り出すことができ,弁尖,弁下の詳細な観察に有用である.以下に3Dアプローチならではのポイントをまとめた.
①弁尖の観察
機能性僧帽弁逆流では正常と比較して弁接合が浅くなる.乳頭筋と弁輪の距離が離れているほど,すなわち弁尖のテザリングが強いほど弁接合は浅くなる.左室拡大の形式により弁接合の深さは部位によって違いがみられる.MPR法を用いるとA1-P1, A2-P2, A3-P3のそれぞれの正確な部位での弁接合の長さが計測できる.画像取り込み,切り出し,計測まで3分足らずであり,手術室での観察であっても麻酔導入から大動脈遮断までの間に十分計測可能で正確なデータを外科医に報告できる.
②弁下部の観察
左室拡大や僧帽弁テザリングの著明な症例では弁下構造に対する術式が必要となる.よって胃からの観察は重要である.術中であれば患者さんに苦痛を与えることはない.MPR法を用いて切り出し断面を連続的に動かして左室‐乳頭筋‐腱索の解剖を把握する.胃からの弁下描出は全例で可能というわけではない.しかし左室が拡大している機能性僧帽弁逆流症例では左室下壁が広く横隔膜に接しており,良好な画像が得られることが多い.
③僧帽弁構造の定量
MPR法を用いて適当な断面を切り出すことにより弁輪の前後径や乳頭筋ヘッドと弁輪との距離を計測することができる.さらに詳細な定量については専用のソフトウエアを使用してオフライン解析を行う.テント化の容積などの3次元データの定量,テザリング形態のvisual表示が可能である.これらの情報を外科医と共有しながらよりよい術式をデザインし,後の症例に生かせるよう努力することが大切である.