Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション15 <教育に活かす> 心エコーにおける生涯教育の現状と展望

(S242)

循環器専門医を目指す若手医師への心エコー図教育

Education of Echocardiography for Young Cardiologist

瀬尾 由広

Yoshihiro SEO

筑波大学循環器内科

Cardiovascular Division, University of Tsukuba

キーワード :

【1.循環器治療の進歩と心エコー図へのニーズ】
循環器専門医を目指す若手医師の多くは日本循環器学会認定循環器専門医研修施設および研修関連施設に所属している.近年はインターベンションが盛んな病院への指向が強く,三次救急まで行う規模の大きい公的病院,そして一般市中病院での研修が人気である.若手医師はインターベンションへの指向が強く,カテーテル手技をマスターすることには熱心である.一方,心エコー図検査を自ら行う機会も少なく,CT検査をオーダーするごとく,心エコー図検査は技師が自動的に結果を出してくれるものと思っている後期研修医がいるのには驚かされる.当然心エコー図の重要性や面白さを教える機会も少ないので,循環器のサブスペシャリティとして心エコー図を専門にするといってもよく理解されない.むしろ診断学はCT,MRIが加わり,ますます心エコー図が軽視されてきた.しかし,ここ数年風向きが変わってきたようである.高齢化社会の到来は循環器疾患を有する患者数を増加させている.一方で急性期循環器疾患の予後の改善によって,二次予防の観点から慢性期の管理の重要性が増している.このような構造変化によって弁膜症を含む心不全分野への関心が大きくなってきた.さらに,CRT,LVADなど侵襲的心不全治療が普及し,カテーテルインターベンション治療の進歩によってstructure heart diseaseという分野が創設されるに至った.このように心不全の管理やインターベンション治療に心エコー図の重要性が高まってきた折,幸運なことに3Dやスペックルトラッキング法など心エコー図検査の進歩も波長があってきたようである.
【2. 魅力ある心エコー専門医という選択】
いま話題のstructure heart diseaseはPCIとは異なりインターベンション専門家だけでは完結できない治療でありHeart Teamによる対応が求められる.心エコー図専門家には経食道心エコー図,3D心エコー図など特殊なエコー技術が必要とされるため,専門的な研修が必要であることは明白である.また心不全分野においては拡張機能や弁膜症など心エコー図専門医は得意であるが,循環器医全般としてはどれほど有用なのか十分に認識されていない.今後は心エコー図の画像化方法,新たな指標について心エコー図専門医とだけでなく心不全医や外科医とのディスカッションを通して,心エコー図専門医を認知していただくことに繋がるはずである.そのために専門医,指導医に課せられる責務は大きく,更には先進的な検査法や心不全やカテーテルインターベンションにも精通するようにしなくてはならない.このような特殊な訓練を受けた心エコー図専門医という選択肢が他の専門家と肩を並べ,それを指南する時代が来るだろう.そして若手医師に心エコー図専門医という選択肢が魅力的に映るに違いない.
【3.学会発表と論文化:ボーダーレスな支援を】
心エコー図の専門医は他のサブスペシャリティに比較して少ないため,心エコー図を用いた研究をしたいが指導医がいない,自ら研究しているが方法や結果の導き方に不安があるという若手医師は多いはずである.このような研究志向のある若手医師に学会や研究会が支援し,論文化まで教育していく必要がありのではないか.繰り返しになるが心エコー図専門医へのニーズが高まっている今こそ,所属組織の垣根を取り払い,学会を挙げて若手研究者の育成も行っていくことが重要であると思う.