渡辺 弘之

Hiroyuki WATANABE

東京ベイ医療センターハートセンター循環器内科

Department of cardiology, Heart center, Tokyo Bay Medical Center

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負荷心エコー図は，簡単な原理で成立している．運動後に運動前と比べて壁運動が低下していれば虚血を疑う原理である．正常では運動すれば左室壁運動は良くなる．細かくいえば，運動後に虚血がない領域では壁運動が改善し，虚血領域では壁運動は低下する．従って運動後の局所壁運動低下部位を同定することは，虚血の存在診断と部位診断を同時に行うことになる．負荷の種類には，大きく分けて運動と薬物がある．運動負荷にはエルゴメーターとトレッドミルがある．エルゴメーターは座位と臥位で行うものがあり，特に臥位エルゴメーターは運動中の記録が比較的容易で最大負荷時の画像が記録できる点が最大のメリットである．トレッドミルは運動が生理的で誰でもできることが最大の利点であり，運動強度の設定のしやすさでも優れている．特に高齢者では，できる範囲の運動で虚血の有無を調べることができる．年齢から推定される最大負荷の85％程度まで運動させ，最大運動時または直後の左室を記録する．薬物負荷は，ドブタミンに代表される強心剤と，ジピリダモールに代表される血管拡張薬がある．前者は心筋酸素需要を増やし，後者は心筋の血流不均衡を生み出すことで虚血を誘発している．虚血誘発に，いずれが優れた薬剤かについては決着がついておらず，欧米でも意見は統一されていない．日本では主としてドブタミンが用いられている．運動負荷と同様に心拍数を目標に投与量を漸増し，各段階の壁運動を記録する．いずれの手法を用いた場合でも，記録された画像を負荷レベルに応じてside-by-sideに並べて壁運動異常を比較する．壁運動増加が正常，壁運動不変あるいは低下が虚血である．この診断は，核医学的手法に匹敵する精度がありながら，非侵襲的に被爆することなく虚血診断ができることが最大のメリットである．冠動脈狭窄の画像化は解剖学的・形態的狭窄度が評価できるが，それだけでは不十分である．特にこれらの方法を用いた機能的異常に注目することが臨床的には極めて重要である．すなわち負荷心エコー図は，虚血性心疾患への統合的アプローチには必須の方法として，もう一度見直されるべき方法である．