Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション6 <診療に活かす> Integrated imagingの時代へ:エコー,CT,MRIの使い分け

(S232)

心エコー図で不安定狭心症に迫る

Detection for Acute Coronary Syndrome by echocardiography

大西 俊成

Toshinari ONISHI

桜橋渡辺病院内科

Cardiovascular Center, Sakurabashi Watanabe Hospital

キーワード :

救急外来において胸痛患者のリスク評価を行なうことは重要である.従来のルーチン心エコー図検査のみでは左室壁運動異常を伴わない不安定狭心症などの急性冠症候群(ACS)を診断することは困難であった.ストレイン法をはじめとする組織ドプラ法により非侵襲的に心筋速度を計測することで,壁運動評価を定量的かつ客観的に評価し得ると考えられる.
【Post-systolic shortening(PSS)の検出】
PSSの存在は高度な虚血心筋を示すとされている.我々は,カラー組織ドプラ法を用いて狭心症の診断法としてPSSの存在を断層心エコー図上に表示する方法(Detection of Diastolic Abnormality by Displacement Imaging: DADI)を考案した.
【PSSのパラメトリックイメージングとしてのDADI】
東芝社製Aplioを用い,心尖部四腔断面および二腔断面においてカラー組織ドプラ法を施行し,心筋速度からdisplacementを求め,収縮期のピーク時相のずれにより正常 (緑色) から遅延(赤色)までを表示した(DADI).DADIを用いて冠動脈支配領域に一致して心筋のセグメントが赤色表示されるものを陽性とした.
【安定狭心症に対するDADIの評価】
一般外来にて安定狭心症が疑われ,心エコー図上,左室壁運動が正常であった186症例を対象とした試験では,冠動脈疾患を有する43症例(23%)に対してDADIは,感度60%,特異度75%,正確度72%で安定狭心症を予測し得た.陰性予測率は86%,陽性予測率は42%であった.
【不安定狭心症,ACSに対するDADIの評価】
胸痛を主訴に救急外来を受診した連続56症例を対象に,ルーチン心エコー図検査にて左室壁運動正常と判定された症例に対しDADIを追加した試験では,41症例(73%)がACSであったのに対し,従来のルーチン心エコー図検査による壁運動異常の存在のみではACSの診断は感度75%,特異度100%であったが,DADIを併用することにより感度97%,特異度66%,正確度89%,陰性予測値91%でACSを診断し得た.
【結語】
DADIを用いてPSSの存在を画像化すること可能であり,DADIは,負荷なしに狭心症を診断するための補助ツールとして有用であった.また,DADIを併用すれば心エコー図検査を用いてより高率にACSを診断することができ,救急外来での胸痛患者のリスク評価にも有用であることが示された.