阿部 康彦

Yasuhiko ABE

東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

心エコーの2次元断層像による2D Speckle-Tracking（2DST）を応用した弊社の解析アプリケーションである2D Wall Motion Tracking（2DWMT）について紹介する．
今回のセッションの主テーマは「2DSTによるstrain値のベンダー間の差異」であり，これに関連して近年，strainの標準化が議論されている．ここで，もしstrainの定義が違っていれば，追跡が理想的に行われた場合を考えても結果は異なってくる．そこで標準化を考える際の一提案として，先ず各社がどのようなstrain定義を用いているかを共有し，推奨されるstrain定義を定めることが先決と考えている．一方で追跡の詳細な方法については，臨床画像下でいかに理想的な追跡性能を達成するかという各社の工夫とノウハウの範疇にあり，標準化とは異質の内容と捉えている．以上の観点に立ち，2DWMTに関して，主にstrainの定義とvalidation結果についての解説を行う．
・strainの定義：複数の追跡点から構成される輪郭に含まれる，局所的な2追跡点ペア間の所定方向における長さの変化率として，ペア毎に現時間（t）での strain（t）=（L（t）−Lo）／Lo×100 ［％］ （Loは基準時間での長さ，L（t）は現時間での長さ）で与える．心筋の内膜・中層・外膜の各位置で追跡された3本の輪郭を用いて，心筋内を分離した3カ所のstrainを得ている．所定方向の長さとして，Longitudinal （LS） とCircumferential （CS） は3つの各輪郭における輪郭線上の2追跡点間の距離を，Radial （RS） とTransverse （TS） は3つのうち2つの輪郭間における壁厚（内膜側の輪郭に垂直な方向の2輪郭間の距離）を求める．最終的なグラフの値は，各segmentに含まれる複数ペアによるstrainの平均値が出力される．なお，JUSTICE¹）ではLSとCSは内膜，RSは内外膜の輪郭位置によるstrainが解析された．
・validation結果：心筋全層でのRSについては，臨床例によるeye-ballとの比較でr=0.97 （p＜0.001）の相関が得られている^2）．内外層を分離したRSとCSについては，数値モデルによる検証で平均誤差0.0〜1.3％で期待値に一致し^3），羊によるsonomicrometryとの比較でCSはr=0.90 （p＜0.001），RSはr=0.71 （p＜0.001） の相関が得られている^4）.
【参考文献】
1）瀧聞，竹内 他　Circ J 2012; 76: 2623-2632.
2）小川，穂積 他　Am J Cardiol 2006; 98: 1531-1538.
3）大内，阿部 他　日超医 2008; S360.
4）石津，瀬尾 他　Eur J Echocardiogr 2010; 11（4）: 377-385