大住 良太

Ryota OSUMI

東芝メディカルシステムズ株式会社超音波事業部超音波開発部臨床応用開発担当

Aprication & Research Group, Ultrasound Systems Development Department, Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

超音波診断装置における診断情報の定量化のために，当社が提供しているアプリケーションの代表例として，メカニカル4Dプローブを用いたリアルタイム3次元造影超音波による腫瘍血流の定量化と，エラストグラフィーによるストレイン比解析等がある．
【メカニカル4Dプローブを用いたリアルタイム3次元造影超音波による腫瘍血流の定量化】
超音波造影剤を用いた腫瘍血流の定量化手法として腫瘍内部の輝度変化曲線（TCA：Time Curve Analysis），その特徴量パラメータの解析がある．上記はRaw Dataプラットフォーム上での関心領域内のエコーパワー信号の線形化とTCA算出，モデル関数へのフィッティング・特徴量パラメータ抽出の処理過程からなる．最近では分子標的薬の臨床応用に伴う早期の治療効果判定の重要性が指摘されており，繰り返し検査可能で時間空間分解能の高い造影超音波の有用性が報告されている［1］［2］．早期に治療効果が現れる事例がある一方，副作用や効果の見られない事例もあり，どのパラメータが適切に効果の有無を判定しうるかが研究されている．しかし，2次元造影超音波では呼吸変動などに伴う断面ずれ（off-plane）の動きは補正しきれない場合がある．また1断面（腫瘍径最大）のみでは，血流分布が不均一な腫瘍においては観察断面により異なる血流動態を示し，腫瘍全体の血流情報が含まれない場合がある．弊社はメカニカル4Dプローブを用いたリアルタイム3次元造影超音波を製品化した．腫瘍全体をボリュームとして捉え3次元空間で追従できるため，上記off-planeの影響や断面依存性の問題を解消できると期待されている．時間空間分解能の改善や関心領域追従の自動化などが今後の検討課題である．
【エラストグラフィーによるストレイン比解析】
乳腺腫瘍の超音波画像診断では，Bモード断層像のみならず，組織の硬さの情報も有用であると考えられている．硬さの計測法の一つとして，組織の変形前後の歪み（ストレイン）の分布を映像化するストレイン・エラストグラフィー・イメージング（SE：Strain Elastography Imaging）がある．SEでは画像パターンのスコア化による腫瘍の鑑別が行われているが，より客観的な評価指標としてストレイン比（Strain Ratio）がある．ストレイン比は，ストレイン分布に対し関心領域を正常部位と病変部に設定し，病変部のストレインに対する正常部位のストレインの比をとることで得られる．組織への圧迫開放の適切さは速度プロファイル波形により確認できる．当社ではオフラインシステムとリアルタイムシステムでの両方の解析に対応している．リアルタイムシステムでは，組織移動速度を空間微分してストレインレートを計算し，所定フレーム数の期間ストレインレートを時間積分するという手順でストレインを計算し，変位1mm程度の弱い圧迫でも解析可能である．
［1］Lassau N, et al. “Dynamic contrast-enhanced ultrasonography （DCE-US） with quantification of tumor perfusion: a new diagnostic tool to evaluate the early effects of antiangiogenic treatment”, Eur. Radiol. 17（Suppl 6） F89-98.
［2］Sugimoto, et al. LiverInt 2013 in press.