Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム9 <科学に活かす> 最新の超音波診断装置技術の動向

(S203)

超音波顕微鏡(超高周波超音波)観察の現状と将来

Current status and future of Ultrasonic Microscope for medical use

小林 和人

Kazuto KOBAYASHI

本多電子株式会社研究部

R&D, Honda Electronics Co., LTD.

キーワード :

【はじめに】
超音波顕微鏡は1985年から医学・生物学に対する応用研究が進められ,切片化された生体組織の音速分布を計測することで,組織の物理的性質を定量的に計測が可能となった.従来,超音波顕微鏡はバースト波を用いて観察していたが,2002年にパルス波を利用する技術が開発された.パルスの広帯域特性を利用することで,一度に広帯域信号を取得でき,切片化された生体組織の音速分布を短時間で計測できるようになった.2006年には,生きている生体組織の物理的特性の計測を目的として組織の音響インピーダンス計測も可能となり,超音波顕微鏡の応用に広がりが増した.超音波顕微鏡は組織切片又は,組織表面のみを計測するが,周波数100MHzのプローブを用いて,高分解能のBモード観察にも応用されるようになってきた.このような経過を経て,医用超音波顕微鏡は,活用の幅が広がり,さまざまな研究が行われるようになってきたのでその内容を報告する.
【超音波顕微鏡の観察の現状】
1)組織音速測定の高周波化組織音速測定としての超音波顕微鏡は,100MHz近辺の周波数が利用され,2.4mm四方の観察範囲で,約18μmの分解であったが,250MHz高感度センサーを用いることで10μm以下の高分解能を得ることが可能となり,0.6mm四方の観察範囲で細胞一つを確認できる分解での組織音速分布の観察が行われる様になった.2)培養組織細胞の観察パルス超音波で実用感度を得られる高周波プローブとして400MHzプローブ及び500MHz対応のパルサーレシーバーを開発した.フォーカス点の工夫により,培養中の細胞を培養ディシュの底面から試料汚染することなしに細胞を観察することが可能なため,培養中の細胞観察に応用できるようになった.最近ではこの培養細胞に薬品を滴下させ,薬品による細胞の変化観察を試みている3)3D構造観察  高周波超音波による観察において,超音波の特質を生かして単に組織表面観察だけでなく,組織を透過する音を利用して超高周波のBモード観察が行われるようになり,従来の超音波診断装置では達成できない高分解能な画像を得ることができた.超音波顕微鏡はX-Yの機械的操作を行う機構を持っているため,その機構を生かして,3D情報を得ることができるため,皮膚科領域での高分解能な3D超音波観察等に利用し始めている.
【まとめ】
パルス波を用いた超音波顕微鏡は,観察方法の手軽さと,生きた組織を見ることができるため,観察の応用が広がり,従来にない種々の条件での組織の物理的パラメーターの測定が可能となった.また,高分解超音波Bモードへの応用も行われて,皮膚科領域での有用なデータも得られている.超音波で高い分解能での観察が可能になることで,細胞レベルでのより高い分解能での観察の要求が高まっていくと考える.