Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム9 <科学に活かす> 最新の超音波診断装置技術の動向

(S202)

携帯型超音波装置を実現する最新技術

New technology for realizing a handheld ultrasound device

雨宮 慎一

Shinichi AMEMIYA

GEヘルスケア・ジャパン超音波

Ultrasound, GE Healthcare Japan

キーワード :

超音波診断装置をより身近な機器として使用してもらうため,携帯型超音波装置VSCANが開発された.より小型化を実現する為に,どのような要素があったかを述べる.
【仕様の適正化】
小型のLCDには,民生用を含めると多くのサイズがあるが,開発当初,医療用として長い供給年数を保証されたLCDは3.5インチだけであった.この3.5インチの表示領域では複数のモードを同時に表示することは,実用上不可能であり,単一画面であるB-modeとCFMに限定した.また,セクタの画角は通常90度であるが,LCDを縦型(ポートレイト)とすることから,画角は60度強に狭めた.またB-modeも操作の簡略化の為,Harmonic画像に限定した.この2つから,超音波の送信回路の最適化を行い,小型化と高効率化を実現した.
【有効スペース】
携帯型超音波装置では,持つところの有効スペースは僅かである.しかし,従来型の超音波探触子のハンドル部は殆どが空きスペースであり,これを有効に使用すべきである.先に述べた小型化した超音波送信部をハンドル部に入れ,更に電子4Dプローブ(3V,4V)で開発された受信サブアレープロセッサー(SAP)もハンドル内に収めた.これにより,多くの送受信部をプローブ側に移動させることができただけでなく,同軸線の数を減らし細いケーブルを用いることが可能となった.通常の携帯装置,例えば携帯電話のバッテリー充電回路は本体側に入っている.それはACアダプターを汎用化したいからである.当初我々も,本体側に入れることを計画していたが,目標とする大きさ内では入りきらず,本体を大きくすることも考えたが,バッテリー充電回路を小型化し,ACアダプターのコネクタ内に入れ,持ちやすい本体形状を確保した.また,充電状態を表示するLEDもコネクタ内に移し,本体のデザインをシンプルなものとした.
【最新半導体】
小型化,省電力化においては最新半導体の利用が必須である.最新半導体を利用するには3つ方法が取られる.まずは,企業として技術,ノウハウを100%守るべき回路で,専用ASICを自社開発する.前記SAPはGE専用に自社開発された.次のレベルは開発において超音波診断装置のノウハウを必要とするが,いずれ公になりそうな回路で,半導体会社と共同で開発され,一定の優先使用の後他社にも外販されるASICである.送信ASICとフロントエンドADC(アナログデジタル変換)ASICが,この形で開発された.3番目のレベルは,超音波診断装置用ではなく,主に民生用ハンドヘルド機器の為に開発された半導体で,その例としてグラフィック機能等を集積したCPU(中央演算装置,Multimedia Application Platform)がある.
【終わりに】
携帯型超音波装置Vscanは,多くの先生方に使用して頂き,多くの要望も頂いている.今後も我々は先進技術を取り入れて携帯型超音波装置を進化させ,より使いやすくなるように努めなければならない.