Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム8 <科学に活かす> 組織の弾性と粘性:基礎と臨床応用

(S199)

肝臓の粘性と弾性 動物モデルの弾性測定による検討

Viscosity and elasticity of the liver; review in measurement of elasticity of animal model

吉田 啓子, 小川 紗織, 平良 淳一, 河野 真, 安藤 真弓, 佐野 隆友, 宮田 祐樹, 杉本 勝俊, 今井 康晴, 森安 史典

Keiko YOSHIDA, Saori OGAWA, Junichi TAIRA, Makoto KOUNO, Mayumi ANDOU, Takatomo SANO, Yuuki MIYATA, Katsutoshi SUGIMOTO, Yasuharu IMAI, Fuminori MORIYASU

東京医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【目的】
ラットの肝臓を用いて(1)血流動態のelasticityへの影響,および(2)NASHモデルにおけるviscoelasticityについて検討した.
【方法】
(1)通常餌を給餌したラット10匹(10週齢,雄)に対して,超音波診断装置Aixplorerを用いて肝臓のelasticityを測定した.次にペントバルビタールでラットを安楽死させ,心拍動の消失を確認したのち,血圧・血流のない状態での肝臓のelasticityを測定した.その後,腹部を切開して露出させた肝臓のelasticityを測定した.最後に,肝臓を取り出し生理食塩水に浸水させ,脱血した肝臓のelasticityを測定した.(2)ラット14匹(5週齢,雄)に対してMCDD食を給餌し,NASHモデルを作成した.給餌開始から4週,6週,8週,10週,12週,14週,16週後に2匹づつラットの肝臓のelasticityを測定した.まずAixplorerで肝臓のelasticityを測定したのちラットを安楽死させ,肝臓を取り出してInstron万能試験機でその弾性を測定した.各ラットの肝臓をBrunt分類によりstageとgrade毎に分類し,AixplorerとInstronそれぞれの測定値を比較した.
【結果】
(1)ラットが生きて血圧・血流が保たれている状態と,死んで血圧・血流が失われた状態では,肝臓のelasticityに有意差は認められなかった.同様に血圧・血流が失われた状態での経皮的測定と直接測定でも,肝臓のelasticityに有意差は認められなかった.しかし,脱血した肝臓は有意にelasticityの低下が認められた.(2)Aixplorerの測定値は,stage/gradeによる有意差は認められなかった.しかし,Instronの測定値は,stage/gradeが進む毎に有意に低下した.
【考察】
Shear wave elastography(SWE)によって計測される剪断波伝搬速度は,組織の弾性と粘性の両者に依存する.一方,Instron万能試験機では圧迫の速度を無視できるので,組織の弾性のみが測定される.今回の脱血と初期のNASHモデルにおける測定結果は,肝臓の病態に応じて弾性と粘性の比率が変化し,それがSWEによる剪断波伝搬速度を規定するということで説明できると考えられる.