Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション24 <診療に活かす> Real-time Tissue Elastography 〜10年の歩み〜 (協賛:日立アロカメディカル株式会社)

(S190)

前立腺癌診断における組織弾性超音波(Elastography)の有用性と問題点

Efficacy and Problem of Real-time Elastography for detection of prostate cancer

宮川 友明1, 堤 雅一1, 松村 剛2, 三竹 毅3

Tomoaki MIYAGAWA1, Masakazu TSUTSUMI1, Takeshi MATSUMURA2, Tsuyoshi MITAKE3

1日立製作所日立総合病院泌尿器科, 2日立アロカメディカル株式会社第二メディカルシステム技術本部開発設計部アプリケーション開発グループ, 3日立アロカメディカル株式会社第二メディカルシステム技術本部

1Department of Urology, Hitachi General Hospital, 2Application R&D Group R&D Design Department, Hitachi Aloka Medical,Ltd., 3Medical Systems Engineering Division 2, Hitachi Aloka Medical,Ltd.

キーワード :

超音波組織弾性イメージング(Elastography)は,組織の硬さの違いを表示することを可能とした技術であり,組織に外力を加えて組織内部に歪みを生じさせ,硬さの違いによる歪み分布の偏在を画像化したものである.乳腺領域ではすでに有用性が報告されている.当院では2004年から前立腺癌診断においてElastographyの有用性を検討した.まず前立腺癌患者51例の摘出検体と,術前Elastography動画(Elastographic Moving Image: EMI)との比較検討において,15例(29%)が全てのEMIが病理切片と一致し,28例(55%)が一部一致した結果であった.前立腺癌の局在で検討すると,通常の超音波では評価しにくい,前立腺腹側の病変で検出能が高い結果であった(腹側94% vs 直腸側57%).またPSA高値患者311例の前立腺生検スクリーニングにおいて,直腸診,TRUSの感度が38%,59%であったのに対し,Elastographyの感度は72.6%と有意に高かった.しかし経直腸プローベを用いた前立腺Elastographyの用手的な方法は,操作性が悪く,画面ずれや不適切な圧迫を生じ,28%で分析不可能なEMIとなっていた.その欠点を克服すべく,経直腸プローベ横断面表面に,着脱型バルーンを装着し,水の出し入れによってバルーンを膨張収縮させ,組織を圧迫して画像を得る手法(Real-time balloon inflation Elastography: RBIE)を開発した.この方法により評価不可能な画像は2%に減少し,前立腺癌患者55例の摘出検体との比較では,8例(16%)が全てのEMIが病理切片と一致,23例(45%)が一部一致と,用手法と同等の診断能を維持していた.前立腺Elastographyの特徴として,前立腺腹側に局在する癌の検出能が高い傾向があり,直腸側の癌が画像化しにくいことがある.また,乳腺組織と比較すると,腫瘍と正常組織との間の組織弾性率の差が少なく,前立腺肥大症による偽陽性など,画像化しにくい可能性も考えられている.基礎研究における初期データにて,前立腺癌患者の摘出検体を用いて,ホルマリン固定前に1cm幅に分割し37℃保温のうえ,インストロンを用いて組織を圧迫し,組織弾性率を測定した結果,前立腺癌の組織弾性率は,グリソンスコアが高値であるほど高い傾向があり,低悪性度の病変は前立腺肥大症とは大きな変化がない結果が得られており,今後の検討が必要と考えられる.