Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション24 <診療に活かす> Real-time Tissue Elastography 〜10年の歩み〜 (協賛:日立アロカメディカル株式会社)

(S189)

RTE(Real-time Tissue Elastography) in this decade

中島 一毅

Kazutaka NAKASHIMA

川崎医科大学総合外科学

General Surgery, Kawasaki Medical School

キーワード :

癌組織では血管と細胞の密度が増加するにつれてその硬さが増すとされ,この硬化は早期の癌でもすでに始まっているといわれている.このため乳癌はある程度の大きさから触知可能となり,古くから視触診を用いた検診が乳癌で行われてきた.この癌の硬さの情報を診断に用いようという考えは,組織の弾性(硬さ)を検出することによる新しい画像診断手法として発展した.1987年に植野らからリアルタイム超音波検査を応用し,圧迫して組織の硬さを視覚的に判定するDynamic testが報告された.また,硬さ自体を画像化する概念は,1991年にテキサス大学のOphirらによりエラストグラフィという名称で発表された.このエラストグラフィ技術の概念は,探触子を押し当てることにより圧迫された組織の変位の様子,すなわちひずみの分布を画像化し,その病変部位の硬さを診断情報として評価しようとするものである.1996年には高速に精度良く組織の変位を検出するCombined Autocorrelation Methodが発表され,2001年には椎名(筑波大学,現在京都大学)らにより組織弾性イメージング手法が発表された.その後,2003年にアルゴリズムの改良と十分な演算能力を有する装置への搭載により,通常のルーチン検査の一環として違和感なく適用されうる構成となった実臨床レベルの超音波エラストグラフィ装置が「Real-time Tissue ElastographyTM(以下,RTE)」として発売され,超音波による「エラストグラフィ」が日常診療に導入されることになった.特に乳腺領域では以前より存在した視触診の概念のため,エラストグラフィの受け入れがスムーズであり,発売,当初より多くの臨床研究が行われた.その後,超音波診断装置の進歩と共にエラストグラフィ技術も向上し,現在のエラストグラフィ装置では,悪性,良性の鑑別のみならず,組織の硬さの分布を描出することにより組織学的情報を評価可能な手法,抗がん剤治療における治療効果を評価可能な手法,腫瘤のみならず非腫瘤の診断・評価が可能なツールとなっている.今回,RTEの乳腺診療領域での歴史とアプリケーション,診断方法の変化を供覧し,さらに発展しつつあるRTEのアプリケーションについて解説をさせていただきたい.