Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション8 <教育に活かす> 超音波検査士に望まれる画像調整とレポート作成

(S184)

超音波検査士に望まれるレポート作成

Request for report creation of Registered Medical Sonographer (RMS)

森 秀明

Hideaki MORI

杏林大学医学部第三内科

The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

我が国では日常臨床の場で行われている超音波検査の多くは臨床検査技師に委ねられている.超音波検査は主観的な検査法であり,施行者が最も多くの情報を把握しているため,本来であれば検査を施行した者が診断するのが理想であるが,臨床の場では臨床検査技師が検査を施行し,結果の判定は医師が行う事が多い.検査を依頼した医師に正確な情報を伝えるためにはどのようなレポートを作成する必要があるかについて,腹部領域を中心に報告する.
1)レポートを記載する上で最も大切なことは見落としのない走査を行うこと,および検査を依頼した医師が理解できるような鮮明な画像を記録することである.
2)正しい用語やサインを用い,できるだけ略号は用いない.また誤字・脱字に注意する.
3)依頼医の知りたい情報に的確に答えられるレポートを作成する.依頼医の知りたい情報とは症状や検査所見から疑われる疾患の鑑別が行えるレポートを作成することである.そのためには疾患の概念や病態生理および超音波検査に必要な解剖を理解する必要がある.
4)陰性所見であっても記載することにより,術者が観察したことが依頼医にも確認できる.また描出不良な部位がある場合は,「食後のため胆嚢の描出が不良」といったようにどこが検査不十分であったかを記載する.
5)超音波の1波長は約0.4〜0.5mmであり,それ以下の分解能は有さない.超音波診断装置の計測で得られる小数点以下の表示は精度上問題があり,四捨五入して1mmの単位で記載する.
6)腹部超音波検査に先行して腹部CTやMRIなどの検査が行われている場合はそれらの検査結果を参考にして,異なる点があれば,「CTでは描出されていないが,肝S8に5mm大の低エコー腫瘤を認める」といったように対比した所見を記載する.
7)腫瘤の経過観察の場合は,大きさの変化を前回の検査結果と比較するのは当然であるが,必要に応じてそれ以前の検査結果も参照してレポートに記載する.また前回の超音波検査では描出されていた所見が,今回は描出されなかった場合は,その旨を記載するとともに,その理由として,今回条件が悪かったのか,前回の所見がover diagnosisであったのか,または治療後などにより消失したのかなど,考えられる理由を付け加えることができればよりよいレポートになると思われる.
8)肝細胞癌のラジオ波焼灼療法や肝動脈塞栓術後の経過観察例では腫瘤の大きさの変化のみでなく,カラードプラや造影超音波検査による血流情報も加味して治療効果が判定できるレポートを作成する.
以上が腹部領域におけるレポートの記載上の注意点である.現状では技師が診断名をつけられないが,検査を依頼した医師が必ずしも超音波検査を専門にしているわけではないので,参考所見として記載した方がよいと思われる.また,より臨床のニーズに対応したレポートを作成するためには,自分が検査をした症例の最終診断がどうであったか,特に腹部領域ではCTやMRIなどの画像検査や手術をしていれば必ず超音波所見と対比して,自身の検査で見逃している所見がないかをフィードバックすることが重要である.
最後に依頼医が知りたい情報の書かれたレポートを受け取るためには,何を目的として,またどのような疾患を鑑別してほしいかなどの的確な情報を検査を施行する技師に伝えることが必要不可欠である.またレポートと実際の診断に解離がみられた場合は,施行者にフィードバックすることで次回以降のレポートの精度を上げることができると思われる.