Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション5 <治療に活かす> 3Dエコーをいかに活用するか

(S180)

消化管疾患における3Dエコーの有用性

Clinical application of 3D ultrasound to gastroinestinal tract

畠 二郎1, 嶺 喜隆2, 春間 賢3

Jiro HATA1, Yoshitaka MINE2, Ken HARUMA3

1川崎医科大学検査診断学, 2東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部, 3川崎医科大学消化管内科

1Dept. of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 2Dept. of Ultrasound Systems Development, Toshiba Medical Systems Corp., 3Dept. of Gastroenterology, Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
超音波を用いた3Dは基本的に理解しやすい表示法としての立体表示を指すと思われるが,volume dataを利用した各種表示法という解釈も可能である.その場合消化管における3D超音波の応用にはいくつかの可能性が考えられ,本企画ではその一端を紹介する.
【消化管におけるvolume dataの応用】
1.Fly-through 消化管は管腔臓器であることから,あたかも内腔を飛行しているかのような動的な管腔面の表示が可能である.断層診断法としての利点は失われるが,画像は内視鏡を用いたそれに類似することから病変の理解は特に超音波に従事しない者にとって容易となる.ただしsurface renderingを用いた手法すべてに共通する課題であるが,対象と非対象の境界が明瞭に分離されていることが必要条件であり,特に内腔に含気の多い消化管においてはこの表示法に適した環境づくり(多重反射やサイドローブの排除も含め)による明瞭なB-mode像に基づくvolume dataの取得が前提となる.なお言うまでもないが内腔が虚脱した状態の消化管では本法を用いることはできない.
2.3D panoramic 消化管は長軸方向に長い臓器であり,一画面で全体を把握することはできない.超音波の視野範囲を拡大する手法としていわゆるpanoramic viewが存在するが,あくまで一断面の追跡であり病変全体の表示法ではない.これに対し連続する範囲で数回のscanにより獲得したvolume dataを連結することにより,あたかも大きなプローブを用いて広範囲をスキャンしたような画像を得ることができる.これにより消化管の広範囲な情報を得ることができるとともに,検者以外の者にとって解剖学的な把握がより容易となる.この手法にはfly-through表示のように管腔内の状況による画像の制限はないが,現時点では機器に内蔵されたソフトではないため,オフラインで画像を作成する必要がある.
3.Multi Planar Reconstruction 胃癌,大腸癌とも本邦において頻度の高い疾患であるが,その深達度は治療方針を大きく左右する.高分解な断層診断法としての超音波はその点で寄与するところ大であるが,体表に対して水平方向,もしくはスキャン方向に対する直交断面(いわゆるC面)の浸潤は検者が頭の中で断層像を構築して判定するしかなく,客観的画像としての呈示は不可能であった.Volume dataを再構築して得られたMulti Planar ReconstructionはC面に限らずあらゆる任意断面での断層像表示を可能とするものであり,深達度の判定における有用性が期待される.しかしながら現状においてはその走査線密度や分解能(方位分解能やビームの厚み方向の分解能に制限される)の限界により画質が規定されてしまう,言い換えれば通常のB-mode(いわゆるA面)に比較して画像が劣っているため,これら両者の改善が望まれる.
【今後の展望】
消化管における3D超音波の有用性は,volume dataの基となる画像そのものの画質に依存すると考えられる.残念ながら超音波のB-mode画像には組織分解能はないため,表示対象をいかに周囲と分離できるかが最大の障壁となっているが,少なくともノイズやアーティファクトの軽減を含めた画質改善は必須である.