飯島 尋子^{1, 2}, 吉田 昌弘¹, 青木 智子^{1, 2}, 柴田 陽子¹, 高嶋 智之², 會澤 信弘², 田中 弘教^{1, 2}, 西口 修平², 廣田 誠一³, 茂櫛 薰⁴

Hiroko IIJIMA^{1, 2}, Masahiro YOSHIDA¹, Tomoko AOKI^{1, 2}, Youko SHIBATA¹, Tomoyuki TAKASHIMA², Nobuhiro AIZAWA², Hironori TANAKA^{1, 2}, Shuhei NISHIGUCHI², Seiichi HIROTA³, Kaoru MOGUSHI⁴

¹兵庫医科大学超音波センター, ²兵庫医科大学内科肝胆膵科, ³兵庫医科大学病理学講座病院病理部門, ⁴東京医科歯科大学難治疾患研究所生命情報学

¹Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, ²Depertment of Internal Medicine, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, ³Department of Surgical Pathology, Hyogo College of Medicine, Hyogo College of Medicine, ⁴Department of Bioinformatics, Medical Research Institute, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

【目的】
超音波による非侵襲的な肝線維化診断には二通りあり，私たちは主にShear waveを用いた診断法により診断を行っている．Virtual Touch Quantification（VTQ）法とShear Wave Elastgraphy （SWE）を用いた肝線維化進展度診断における有用性と問題点を検討した．
【対象・方法】
2008年10月から2012年12月までの間に当院でVTQ法を施行し肝生検で組織学的に診断された慢性肝疾患患者852例（C型 479例，B型 175例，B+C型 9例，NBNC型 189例），男性390例，女性462例，平均年齢　56歳） を対象とした．これらの線維化ステージ分類はF0:43，F1:331例，F2:148例，F3:162例，F4:168例であった．また，2011年9月から2011年11月までの間に，VTQ法とSWE法の両手法で肝硬度を測定施行した組織学的に診断された慢性肝疾患者15例，臨床的肝硬変（血小板数10万以下あるいは食道静脈瘤などの門脈圧亢進症状のあるものを臨床的肝硬変）22例の計47名（C型 27例，B型 4例，NBNC型 6例，男性24例，女性23例，平均年齢60歳） を対象とした．これらの線維化ステージ分類はそれぞれF0:10例，F1:9例，F2:1例，F3:5例であった．VTQの測定は右肋間で肝表より約1cmにROIを設定し，安定して測定できた5回のVs値の平均値を測定結果とした．SWEも同様に肝表から約1cmにROIを設定し3回測定しROI内のShear Wave（Vs値）を2回測定し平均値を測定結果とした．両手法の相関を検討した．本検討は院内倫理委員会の承諾を得ている．
【結果】
VTQの線維化グレード別のVsはF0:1.21，F1:1.22，F2:1.35，F3:1.51，F4:2.18であり，慢性肝炎（F0-3）と肝硬変（F4）の間に有意差を認めた（P＜0.001）．肝硬変と慢性肝炎の鑑別能をROC曲線より検討したところ，曲線下面積は0.890と良好な判別能が得られ，Cut off値を1.61とした時の感度は82％，特異度は86％であった．一方，VTQ法とSWE法を比較し得た，線維化ステージ別のVs値は，VTQ，SWEそれぞれF0-1:1.08，1.38，F2-3:1.48，1.62，F4（臨床的肝硬変）：2.03，2.31，と肝線維化の進展とともに両者ともにVs値は上昇していた．肝硬変と慢性肝炎の鑑別能をROC解析より検討したところ，VTQとSWEの曲線下面積はそれぞれ0.914，0.946と良好な判別能を示した．ROC解析より求めたCut off値は1.67，1.72であり，この時の感度と特異度はVTTQで77％，100％，SWEで91％，92％であった．VTQとSWEは相関係数0.804と有意な相関を示した（P＜0.001）．臨床データとの関連においてVTQ，SWEそれぞれ，PLT，ALB，PTでは両者ともにP＜0.01と相関を認めた．
【結語】
Shear Waveは肝線維化の評価に有用な非侵襲的な検査法である．