Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム20 <治療に活かす> 超音波ガイド下穿刺手技を用いた検査・治療の現状と問題点

(S171)

肝癌局所治療における超音波下穿刺のためのシミュレーションとナビゲーション

Present and future of simulation and navigation of ultrasound guided local ablation therapy of the liver cancer

森安 史典

Fuminori MORIYASU

東京医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology & Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【Fusion imaging】
超音波ガイド下穿刺の技術的な進歩は,特に肝がんのRFAなどの局所治療の進歩により強く促進されたと言える.また,CTやMRIにおけるiso-tropicなボリュームデータが容易に扱えるようになったことも,Fusion imagingと呼ばれる,超音波−CT,超音波−MRIの間の参照画像を使う画像技術が発達したゆえんである.また,肝がんの画像診断においては,EOB-MRIの登場により,ダイナミックCTのみならず,超音波のBモードでも全く同定できない早期肝細胞がんと呼ばれる小さい肝癌が見つかるようになった.また,この早期肝細胞がんの多くが,造影超音波の血管相でもKupffer相でも同定できない.超音波ガイド下でラジオ波治療を行う場合には,肝がんを同定し穿刺するためには,EOB-MRIと超音波のFusion imagingが必須となる.肝癌のラジオ波治療におけるFusion imagingのもう一つの有用性は,焼灼中の治療範囲の同定である.ラジオ波照射によって生じるガスのために,元の腫瘍の位置がわからなくなるため,Fusion imagingにより過去画像の腫瘍位置とリアルタイムの焼灼位置との関係を3次元的に把握することが,正確な治療を行なうためには重要となる.この場合の過去画像のボリュームデータは,MRIやCTよりも超音波のボリュームデータがより有用である.すなわち,US-USのFusion imagingが正確な位置情報を与えてくれる.これは超音波のボリュームデータの取得が,ラジオ波治療開始の直前に行われるため,体位による位置のずれがきわめて少ないことによる.
【造影超音波の併用】
Fusion imagingの造影超音波を過去画像にする場合,Kupffer相の画像を使うことが有効である.中分化〜低分化の肝細胞がんや転移性肝癌の場合はKupffer相でよく抜けて腫瘍の同定と境界がきわめてわかりやすいためである.また,治療後の評価をFusion imagingで行う場合には,造影超音波で焼灼範囲を明瞭にすることができる.
【針ナビゲーション】
針ナビゲーションは,磁気センサーを針先に仕込む場合と,クリップで針の根本に取り付ける場合がある.前者の場合は,ラジオ波に使う針の先端には装着できないため,ガイドニードルのナビゲーションに用いられる.従って,ラジオ波焼灼中には針をモニターできないという欠点がある.後者のクリップ型の針ナビゲーションは,どのタイプの針にも適応され,ラジオ波焼灼の針に装着すれば,焼灼中の針先の位置をナビゲーションしてくれる.焼灼によってガスエコーのために針先の画像が得られない場合にとくに有用である.しかし,針がしなる場合には実際の針先とずれて表示されるので,注意が必要である.近年はラジオ波,マイクロウエーブ,IRE (irreversible electroporation)などで,2本以上の針を同時に使用する,マルチニードルタイプのablation治療が増えている.そのため,複数の針をナビゲーションできる針ナビゲーションの技術が重要となる.クリップの型の針ナビゲーションでは,順次複数の針に付け替えるとか,複数のセンサーを取り付けることにより,複数の針をナビゲーションすることができる.