Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム17 <治療に活かす> 体腔内超音波の現状と展望

(S169)

経直腸エコーを用いた前立腺疾患の診断と治療

Usefulness of transrectal ultrasound in the diagnosis and treatment of prostatic disease

上村 博司

Hiroji UEMURA

横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学

Urology, Yokohama CIty University Graduate School of Medicine

キーワード :

近年,前立腺癌患者の増加が著しく,2020年には本邦において男性固形癌のうち肺癌に次いで第2位になると予測されている.それは,食生活の欧米化や,加速度的に進んでいる高齢化が原因だと考えられている.さらに,前立腺特異抗原(prostate specific antigen: PSA)が前立腺癌の腫瘍マーカーとして普及してきたことも,患者増加に寄与している.最近では,腫瘍が前立腺内に局在する早期癌の割合が増えている.早期癌の治療には,前立腺全摘術や放射線治療(密封小線源治療や強度変調放射線外照射など)が適応とされている.早期癌の割合が95%を超える米国ほどではないが,本邦でも局所限局癌の割合が増加傾向にあり,いかに効率よく早期癌を診断するかが重要な課題である.前立腺癌の確定診断は,経直腸的超音波断層法(Transrectal ultrasound: TRUS)を行いながら,経会陰あるいは経直腸的に生検針を前立腺に刺入して病理診断を行う.TRUSによって,前立腺サイズの測定や形状の確認,前立腺肥大症や癌病巣の検索を行うが,既存のBモードやカラードプラーだけでは癌病巣の描出は不十分である.現在,前立腺生検は左右外腺および内腺の決まった位置に生検針を刺入する系統生検が一般的に行われている.最近では,第二世代の超音波造影剤であるソナゾイドが肝腫瘍の診断に使用され,簡便かつ安全性の高い診断方法として確立している.ソナゾイドを用いて造影超音波法(Contrast enhanced ultrasound: CEUS)を行い,前立腺癌と前立腺肥大症の鑑別,更には標的生検の可能性について検討した.その結果,PSAが10ng/mL以上の場合,CEUSを用いた標的生検は癌検出率を上昇させた.一方,系統生検の本数を増やすと癌検出率が向上して,CEUS標的生検のそれと差は無くなるが,前立腺容積が35mL以下の生検では,CEUS標的生検の方が癌検出率を高めた.前立腺生検では,なるべく標的を絞って針生検数を減らして癌検出率を上げることが望ましい.CEUSは生検だけでなく,限局前立腺癌に対する局所治療などに発展する可能性があり,早い段階での治験再開が望ましい.超音波機器の発達に伴い,例えば鑑別が難しい内腺領域癌がCEUSによって鮮明になってくれば,その利用価値は大いに上がるであろう.また,TRUSは密封小線源治療や前立腺全摘術などにも使用され,前立腺癌の根治的治療に欠くことのできないモダリティとなっている.