Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム17 <治療に活かす> 体腔内超音波の現状と展望

(S167)

血管内超音波の現状と可能性

The Current Status and Future Perspectives of Intravascular Ultrasound Imaging

藤井 健一, 増山 理

Kenichi FUJII, Tohru MASUYAMA

兵庫医科大学循環器内科

Cardiovascular Division, Hyogo College of Medicine

キーワード :

臨床の場で血管,主に動脈を評価する画像診断装置には動脈に直接造影剤を注入する血管造影法に加えて,血管内超音波(intravascular ultrasound:以下 IVUS)血管内視鏡,光干渉断層法などがある.これらの診断法はそれぞれ特徴を有するが,臨床の現場において最も汎用されているのはIVUSである.IVUSは20〜40MHzの超音波端子を直接血管内に挿入することで血管断面を断層像として描出する画像診断装置である.血管造影法においては,血管内腔の“影”を観察することしかできないが,IVUSを用いて血管内を直接観察することで血管径,病変長,粥腫(プラーク)量,プラーク分布,プラーク性状など数多くの情報を得ることが可能である.このように血管を診断するだけでなく,実際に血管内治療に必要な情報を得ることが可能であるため,現在は冠動脈,頸動脈,腎動脈,四肢末梢動脈など,血管内治療が盛んにおこなわれている領域においては血管内治療の際に必要な画像診断装置としての地位を確立している.また,治療の際にのみ使用されるのではなく,血管内治療後に生じる血栓症や再狭窄などの負のイベントが生じた際にも用いられ,血栓症や再狭窄のメカニズムの解明のためにも用いられている.IVUSの持つもう一つの大きな役割がプラークの組織性状診断である.特に冠動脈や頸動脈においては,プラークの破綻が急性心筋梗塞や脳梗塞の原因になっていることが知られているため,プラーク破綻の前段階である不安定プラークを正確に診断することが,心血管イベントを未然に防ぐためには重要である.不安定プラークの性状は複雑で様々な成分から構成されているため,従来のグレースケールIVUSではその診断に限界がある.そのため,近年,超音波高周波(radiofrequency: 以下 RF)信号解析を解析しカラーマッピング表示したシステムを使用してプラークの組織性状を定性的ではなく,定量的に評価することが可能となっている.すでに臨床で使用されており,数多くの臨床試験も行われている.中でも,冠動脈の領域において行われたPROSPECT試験では697例の急性冠症候群症例を対象にIVUS RF信号解析による冠動脈3枝の観察が行われた.3年間(中央値3.4年)のフォローアップ中,治療を行っていない非責任病変に関連したイベントは11.6%に起こり,イベントと関連していたのは,プラーク占有率70%以上,最少内腔面積が4.0 mm2以下,IVUS RF信号解析で診断された不安定プラークであった.このことにより,IVUS RF信号解析で冠動脈の組織性状を診断することが将来の心血管イベント発生を予知する可能性が示された.一方,IVUSには空間分解能が低いという問題点がある(約150μm).一般的に狭窄度が進行したプラークは大きな壊死性コアと繊維性被膜から構成されているが,不安定プラークの有する繊維性被膜は薄く65μmと言われている.そのため,現在主流の40MHzのIVUSではこれらの薄い繊維性被膜を正確に同定することができない.そのため現在はより周波数の高いIVUS(60MHzを中心に)の開発が進んでおり,動物レベルでその安全性と有効性が検討されている.これら高周波IVUSが臨床で使用可能となればIVUS RF解析と合わせ将来の心血管イベントの原因となる不安定プラークを現在よりも高い精度で診断することが可能になると考えられる.