Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム16 <診療に活かす> 健診・検診編:指導者が教えるここだけは見てほしいポイント

(S165)

たまたま検出された甲状腺腫瘤:これは要精査?

Thyroid Nodule

小林 薫

Kaoru KOBAYASHI

隈病院外科

Surgery, Kuma Hospital

キーワード :

【はじめに】
甲状腺の病変は一般人口のなかで非常に頻度が高いことが知られている.健康診断でたまたま甲状腺に腫瘤(結節)を触知する,乳腺の検診で甲状腺の検診を追加する,頸動脈の超音波検査でたまたま甲状腺の病変を検出するなどの機会は増えている.そこで,たまたま検出された甲状腺結節について,超音波検査だけで経過観察にするのか,細胞診を行うべきか,さらにそのうえで経過観察にするのか,あるいは手術適応を考慮するのか等が問題になってくる.たまたま検出された甲状腺結節についてどのように対処すべきかをお話しする.甲状腺の悪性腫瘍では乳頭癌が大部分を占めるため,乳頭癌を中心にして精査基準を示します.
【超音波の機器と走査】
超音波機器としては7.5MHz以上の高周波のプローブが必要である.検査は患者の右側から操作(走査)を行い,画像の左側が患者の右側,あるいは頭側になるようにする.
【頚部と甲状腺の解剖】
最初に頚部の超音波上の正常の構造を読み取る.その上で甲状腺の構造を読み取り,甲状腺腫瘤の所見を検討する.
【甲状腺腫瘤の評価】
結節の所見を評価する.結節の部位,大きさ,形態(整,不整),結節のパターン(充実性,嚢胞性),境界(平滑,粗雑と明瞭,不明瞭),内部エコー(エコーレベル,高エコー,内部血流),隣接臓器との接触浸潤,頸部リンパ節腫大,腫瘍塞栓などを観察して,これを評価する.さらに必要な症例は細胞診を行うべき部位を検討する.
【組織型を推定する】
以上の所見から超音波診断で組織型,あるいは良性・悪性を推定する.超音波検査だけで経過観察にするのか,細胞診を行うべきか,さらにそのうえで経過観察にするのか,あるいは手術適応を考慮するのか等を検討する.
【隈病院における甲状腺結節の精査基準】
—超音波検査の次に細胞診を行うべきか否か—
[結節の最大径] [対応]
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(1) 5mm以下→ 原則的に経過観察
(2) 6mm--10mm   
  A. 乳頭癌を疑う→ 細胞診へ   
  B. 良性と思える→ 経過観察
(3) 11mm--20mm  
  A. 嚢胞→ 経過観察  
  B. 充実性腫瘤→ 細胞診へ
(4) 21mm以上→ 細胞診へ
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注1:片葉切除予定の対側葉の疑わしい病変は細胞診を行う.
注2:当院では,微小癌は細胞診で診断を付けた上で,低危険度の微小癌は非手術・経過観察も選択肢のひとつと説明している.疑わしい病変が甲状腺内に限局し,リンパ節腫大がない場合にはあえて細胞診を行わないことも可である.ただし,気管に接するもの,甲状腺の背面に濾出し反回神経に近いものは細胞診を行う.11mm--20mmで濾胞性腫瘍を疑うとき,内部充実性かつ境界粗雑,または内部充実性かつ内部低エコーの場合は濾胞癌の可能性を考えて精査を行う.
注3:嚢胞を形成する乳頭癌に注意する.疑わしい場合は充実部を穿刺吸引細胞診する.
注4:多発性結節の場合では,最大の結節よりも超音波所見で悪性を疑う結節を細胞診することが重要である.(さいごに)たまたま検出された甲状腺結節は,悪性腫瘍(乳頭癌)を見落とさないことが重要である.