Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム16 <診療に活かす> 健診・検診編:指導者が教えるここだけは見てほしいポイント

(S163)

大血管:無症状にて偶然発見される大血管疾患 腹部大動脈瘤

Great vessels: The great vessels disease that is detected for no symptom accidentally. Evaluation of the abdominal aortic aneurysm

佐藤 洋1, 石井 克尚2, 中村 武史3

Hiroshi SATO1, Kasuhisa ISHII2, Takeshi NAKAMURA3

1関西電力病院臨床検査部, 2関西電力病院循環器内科, 3関西電力病院消化器内科

1Clinical Central Laboratory, Kansai Electric Power Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Kansai Electric Power Hospital, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Kansai Electric Power Hospital

キーワード :

【序文】
検診領域において無症状で問題となる大血管疾患で超音波検査(US)が重要な役割を占めるものは,腹部大動脈瘤(Abdominal aortic aneurysm : AAA)である.正しい名称と計測法を知っておきたい.
【腹部大動脈瘤の名称】
大動脈瘤は「大動脈の一部の壁が,全周性,または局所性に(径)拡大または突出した状態」とされ,大動脈の正常径としては,一般に腹部で20mmとされており,正常径の1.5倍(30mm)を超えて拡大した(紡錘状に拡大した)場合に「瘤(aneurysm)」と称している.AAAの描出には,大動脈の長軸像および短軸像を描出し,大動脈径,瘤の形状,分枝血管との位置関係,内腔や壁性状を観察する必要がある.大動脈が屈曲,偏位している可能性があるため短軸像からの計測で最大短径を計測する.AAAでは50mm以上になった場合,手術を考慮する.
【リスク対象者】
腹部大動脈瘤(AAA)のリスクファクターは,高齢,家族歴,男性,および喫煙などである.60歳未満での発症は稀である.
【頻度】
腹部大動脈瘤は嚢状よりも紡錘状が多い.また発生部位は腎動脈下が腎動脈上よりも圧倒的に多い.腹部大動脈分岐部直上の小さな動脈瘤は上腹部スクリーニング検査では見落とす可能性があるので注意したい.
【術後の評価】
内科的治療としては降圧療法となるが,瘤径が50mmを超えると瘤破裂リスクが高くなり,予防的に人工血管置換術やステントグラフト内挿術が施行われる.術後でも瘤壁は残存するので,人工血管やステントグラフトと瘤壁との間の血栓を認める.ステントグラフト使用に伴う合併症で約25%の割合でエンドリークがある.ステントグラフト留置後に,大動脈瘤内へ血流のもれがある状態,血栓化が十分に得られない状態であるさらに瘤径が拡大する場合があるので注意して観察する.
【まとめ】
高齢者の検診における腹部USでは,腹部大動脈分岐部まで観察する習慣をつけてほしい.
【参考文献】
(1)超音波による大動脈・末梢動脈病変の標準的評価法(案)Jpn J Med Ultrasonics Vol. 39 No. 2(2012)147-156.
(2)ACC/AHA 2005 Practice Guidelines for the Management of Patients With Peripheral Arterial Disease (Lower Extremity, Renal, Mesenteric, and Abdominal Aortic). Circulation. 2006;113:e463-e654.
(3)大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版).日本循環器学会ホームページ(http://www.j-circ.or.jp/)