Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム11 <診療に活かす> ER編:指導医が教えるここだけは見てほしいポイント

(S160)

整形外科領域

Orthopedics

皆川 洋至

Hiroshi MINAGAWA

城東整形外科

Orthopedics, Johto Orthopedic Clinic

キーワード :

ERで整形外科疾患が疑われたときの対処のコツ.痛い場所を「まず,レントゲン」で時間稼ぎし,「とりあえず,湿布,痛み止め」を1日分処方して面子を維持.決めゼリフが「明日,必ず整形外科で診てもらってね!」と責任回避,以上で多くは事足りると信じたら医者として赤信号.素人ができないことをするのがプロの仕事.瞬時に診断し,即治療へ結びつける,当たり前のことを当たり前に行うこの次世代スタイルを「超音波診療」と呼ぶ.
【五十肩】
中高年の肩痛を一般に五十肩と呼ぶ.ときに痛みは激痛で,しばしば睡眠障害をきたす.レントゲンが診断に役立つケースが五十肩全体の1割以下であるのに対し,超音波検査では腱板断裂,肩峰下滑液包炎,石灰性腱炎,凍結肩などほとんど全ての原因疾患を瞬時に診断できる.腱板断裂や肩峰下滑液包炎は,肩外側から平行法で肩峰下滑液包内へ薬液を注入する.石灰性腱炎は石灰へ針を刺入し生食のパンピングで可能な限り石灰を除去する.凍結肩は,超音波ガイド下C5, C6神経根ブロック後に受動術を行う.いずれも劇的な除痛効果が得られる.
【肘内障】
急に子供が泣き出し,上肢を動かさなくなって親があわてて病院へ連れてくるcommon diseaseである.まだ上手に話せない2歳前後に好発し,半数以上が牽引以外で発症するため病歴があてにならない.肘内障では,輪状靭帯とそこから起始する回外筋が同時に腕橈関節内へ引き込まれることで発症する.超音波検査では,回外筋の引き込みを示すJサインが「肘内障である」,整復後にも所見が残る損傷回外筋の高エコー像が「肘内障だった」,骨折の存在を示す高エコー像の血腫が「肘内障ではない」所見になる.超音波ガイド下に過回内法で整復し,輪状靭帯の整復を確認する.
【橈骨遠位端骨折】
高齢者の転倒で最も頻度が高い骨折である.特徴的なフォーク状変形で診断は簡単だが,重要なのは早期の正確な整復につきる.超音波ガイド下C7神経根ブロック後,仰臥位の患者の上腕にタオルを敷き,タオルの上へ上腕を固定するよう両足で立ち,手を握って骨折部を牽引,掌屈,尺屈して徒手整復.整復位は2画面表示による整復前後の超音波画像で確認し,キャスト後レントゲンで整復位の最終確認を行う.経過観察中に生じる長母指伸筋腱断裂や手根管症候群も超音診断できる.
【ぎっくり腰】
重いものを持ち上げようとした瞬間,中腰で立ち上がろうとした瞬間などに生じる急性腰痛である.急性期は痛くて動けず,消炎鎮痛剤がそれほど効かない.圧痛部位,疼痛誘発テスト,神経学的所見で病態を特定すれば,超音波ガイド下後内側枝ブロック,仙腸関節ブロック,仙骨裂孔ブロックのいずれかで瞬時に痛みを取り去ることができる.
【足関節捻挫】
救急外傷で最も多い疾患である.中学生以上のスポーツ選手は前距腓靭帯断裂,小学生は前距腓靭帯の腓骨側裂離骨折,中高年では踵骨前方突起が最も多いが,レントゲンでは異常を認めにくい特徴がある.損傷によって治療法や治療期間が異なるため,足関節捻挫で生じる腓骨,前距腓靭帯,踵腓靭帯,前下脛腓靭帯,踵骨前方突起,第5中足骨基部は1分以内に観察する技術が必須である.