Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
コメディカル部門:血管および表在領域

(S586)

乳房周囲に発生した神経鞘腫2例の超音波像

Ultrasonographic findings of schwannoma at mammary region: A report of two cases

青木 淑子1, 河本 敦夫1, 石井 克也1, 石引 いずみ1, 佐藤 永一2, 海瀬 博史3, 河野 範男3, 赤田 壮市4

Yoshiko AOKI1, Atsuo KAWAMOTO1, Katsuya ISHII1, Izumi ISHIBIKI1, Eiichi SATO2, Hiroshi KAISE3, Norio KOHNO3, Soichi AKATA4

1東京医科大学病院画像診断部, 2東京医科大学病院病理診断部, 3東京医科大学病院乳腺科, 4東京医科大学病院放射線科

1Division of Ultrasound, Department of Diagnostic Imaging, Tokyo Medical University Hospital, 2Department of Clinical Pathology, Tokyo Medical University Hospital, 3Department of Breast Surgery, Tokyo Medical University Hospital, 4Department of Radiology, Tokyo Medical University Hospital

キーワード :

【はじめに】
神経鞘腫は末梢神経の良性腫瘍で,シュワン細胞から発生する.組織学的に細胞成分が密なAntoni-A型と,細胞成分が粗で粘液腫状間質を持つAntoni-B型に分けられ,両者は一般に種々の割合で混在する.脊髄後根や聴神経,縦隔,後腹膜,軟部では頭頸部,四肢が好発部位とされる.軟部では比較的深部の末梢神経に発生することが多く,乳房を含む体表面に発生することはまれである.今回,乳房周囲の体表面に発生し,超音波画像上皮下腫瘤の形態を示した神経鞘腫2例を経験したので,その特徴を検討する.
【症例1】
21歳女性.小学生時より副乳があると言われており,副乳切除希望にて来院.5年前より左乳房下部に腫瘤を触知し増大傾向にあった.超音波検査において,左乳房下部7時方向皮下に20×15×15mmの腫瘤影を認めた.境界明瞭,軽度分葉形,内部不均一,低エコー,後方エコーは増強.腹側に皮膚へ向かう索状影を認め粉瘤が疑われた.本人希望により腫瘤摘出術が行われた.病理組織検査にて紡錘形の形態を示す腫瘍細胞が増殖しており,核の柵状配列やVerocay体が見られた.一部に浮腫状・粘液腫様の間質を伴う成分が混在していた.Antoni-A型主体で,Antoni-B型が混在する神経鞘腫と診断された.
【症例2】
32歳女性.検診マンモグラフィにおいて,境界明瞭な腫瘤影を認めカテゴリー3.超音波検査において嚢胞の疑いとして当院紹介受診となった.触診において腫瘤は触知せず.超音波検査を施行し,左C領域外側縁皮下に15×10×6mmの腫瘤影を認めた.境界明瞭,軽度分葉形,内部不均一な低エコー,後方エコーは増強.皮膚への連続性を疑う像を認めたため粉瘤を疑った.本人希望により,腫瘤が近接する皮膚を含めて切除された.病理組織検査にて真皮内で紡錘形細胞が束状に配列して増殖しており,所々に核の柵状配列が見られた.粘液腫様間質を伴う成分が小範囲に認められた.Antoni-A型主体で,少量のAntoni-B型を伴う神経鞘腫と診断された.
【考察】
乳房に発生した神経鞘腫は,超音波検査において境界明瞭,内部は均一あるいは不均一な腫瘤影として描出される.しかし,Antoni-A,Bが混在することや,特に陳旧性の病変では出血や血栓,嚢胞などのさまざまな変性が加わることで多彩な内部エコーを呈し特異的な所見はない.乳房内に発生した場合,線維腺腫や葉状腫瘍,圧排性発育を示す悪性腫瘍との鑑別は困難とされている.一方,粉瘤は表皮や上皮成分が真皮内に陥入し,内部に角質がはいった嚢腫を形成するものである.超音波所見として皮膚直下に存在する境界明瞭な腫瘤影で,充実性を呈することが多い.後方エコーは増強し,外側陰影を認めることも多い.腫瘤から皮膚への開口部を示す連続性を確認することで診断は比較的容易と言われている.今回の症例は,いずれも皮下に軽度分葉形で境界明瞭な腫瘤として描出され,乳腺悪性腫瘤との鑑別は容易であった.内部エコーはAntoni-A,B型が混在していることを反映して不均一となった.また,腫瘤から皮膚へ向かうような索状影が認められ,粉瘤と類似した像を示した.腫瘤が結節状で辺縁にくびれを有していたことと,症例2では真皮網状層まで進展していたことがこの成因と考える.本報告で示すように,皮下に発生した神経鞘腫はその進展により粉瘤様の超音波画像を呈する場合もあり得るため,留意が必要と考えられる.