Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
体表臓器:乳腺2

(S578)

高度な乳腺症のため腫瘤像の同定に難渋した乳癌の1例

Difficult differentiation between an invasive ductal carcinoma and sever mastopathy by ultrasonography:Report of a case.

前田 哲代

Tetsuyo MAEDA

日本大学板橋病院乳腺内分泌外科

breast and endocrine surgery, nihon university school of medicine

キーワード :

近年の画像診断技術の進歩により,乳腺の超音波検査によるBモードの画像は,過去のそれと比較して鮮明になり,一昔前では描出できなかったような病変を比較的容易に同定できるようになった.しかしながら,背景に高度な乳腺症を伴う場合,描出することに難渋する症例を経験することがある.今回われわれは,スクリーニングの超音波検査で描出することができず,他の画像診断の所見から2nd look超音波検査を行って,腫瘤を同定することのできた高度な乳腺症を伴う乳癌を経験したので報告する.症例は42歳,女性.マンモグラフィ併用乳癌検診で,両側にびまん性石灰化と右U領域に微小円形で集簇する石灰化病変を認めたため,精査加療目的に当科を紹介されて受診した.来院時の乳房理学所見では,両側乳房に硬結を認めたが,明らかな腫瘤は触知しなかった.最初に行ったスクリーニング目的の超音波検査では,右乳房のCD領域に拡張した乳管内に点状高輝度エコー伴う領域を認めた.左乳房には高度な乳腺症が認められるとの報告であった.乳房造影MRI検査では,右乳房C領域に淡く造影される領域を認めた.同部位のTime intensity curb(TIC)はearly and plateau patternで悪性を疑う所見であった.同時に左乳房C領域にも直径13mmの造影効果のある結節を認め,TICでは悪性を疑う所見であった.造影MRI検査の結果から再度超音波検査を施行したところ,両側ともに全体的に高度な乳腺症が認められ,低エコー領域や腫瘤様に見える部位があり,MRIと比較しなければ腫瘤の同定が困難であった.両者を照らし合わせながら慎重にスキャンしたところ,左乳房C領域に低エコー領域が描出された.乳腺症との鑑別が困難であったが,ドップラーエコー検査で同部にわずかに血流信号を認めた.同部の硬さの判定のため,エラストグラフィ検査を付加したところ,スコアは2であった.超音波検査で同定できた左乳房C領域の腫瘤に対して超音波ガイド下に針生検を施行した.病理組織診断は浸潤性乳管癌であった.乳腺症が乳房全体に高度に認められると,時に腫瘤性病変や非腫瘤性病変の描出が困難となる.今回経験した病変は,浸潤癌で10mm以上の大きさがあったが,造影MRI検査を施行していなければ,発見することはできなかったと考えられる.今後,このような見落としを失くすためには,他の画像検査所見と照らし合わせ,超音波検査所見と合致しないときは,積極的に再度超音波検査を施行することが大事であると考えられた.