長島 沙樹¹, 櫻井 健一¹, 原 由起子¹, 榎本 克久¹, 谷 眞弓¹, 天野 定雄¹, 渕ノ上 史², 増田 しのぶ²

Saki NAGASHIMA¹, Kenichi SAKURAI¹, Yukiko HARA¹, Katsuhisa ENOMOTO¹, Mayumi TANI¹, Sadao AMANO¹, Tsukasa FUCHINOUE², Shinobu MASUDA²

¹日本大学医学部附属板橋病院外科学系　乳腺内分泌外科学分野, ²日本大学医学部附属板橋病院病態病理学系　病理学分野

¹Division of Breast and Endocrine Surgery, Department of Surgery, Nihon University School of Medicine, ²Department of Pathology, Nihon University School of Medicine

キーワード :

非浸潤性小葉癌（LCIS）と非浸潤性乳管癌（DCIS）が混在する,あるいは両者の中間的な像を示す乳腺腫瘍は非常に稀である．今回,我々はこの稀な症例を経験したので,その超音波画像の特徴について報告する．　症例は54歳,女性．右乳房のしこりを自覚し当科を受診した．初診時,右AC領域に直径約1cmの腫瘤を触知した．mammography検査では右M領域に局所的非対称性陰影を認め,CategoryIIIと診断された．超音波検査では,腫瘤は右AC領域に9×6mmの低エコー腫瘤として描出された．腫瘤の辺縁は鋸歯状であり,前方境界線および側方境界線の断裂は認めなかった．内部は不均一充実性であり,高輝度点状エコーを伴っていた．color doppler imagingでは,腫瘤内部の充実性部分に豊富な血流信号を認めた．power doppler imagingでは,腫瘤内部の充実性部分に豊富な血流信号を認めた．tissue elastographyでは,腫瘤の充実性部分は,周辺部分よりも若干柔らかく表示された．造影MRI検査では右乳房AC領域に,造影効果を有する小結節の散在を認めたが,造影パターンでも明らかな悪性所見は認めなかった．吸引式針生検を施行し,intraductal papillary cystic lesionが疑われたが,悪性も完全に否定できず,局所麻酔下に摘出生検を施行した．病理組織診断はDCISを伴うLCISとの診断であった．癌の診断であったため,全身精査後に胸筋温存乳房切除術および腋窩リンパ節郭清術が施行された．術後経過は良好であり,合併症なく退院した．最終病理結果も,摘出生検検体同様にLCISとDCISが混在していた．　LCISとDCISが混在する病変は稀であり,適正な術式や治療方法が確立されていない．また特徴的な超音波所見も明らかではなく,今後,症例を蓄積して検討すべきものと思われた．