Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
産婦人科:その他

(S564)

当院における胎児スクリーニングリストを用いた産科超音波診断の試み

The trial of the obstetrics ultrasonic diagnosis using Fetal Screening List

水内 将人1, 2, 鈴木 将裕1, 高田 さくら1, 岩渕 有紗1, 川俣 あかり1, 石岡 伸一2, 遠藤 俊明2, 斉藤 豪2

Masahito MIZUUCHI1, 2, Masahiro SUZUKI1, Sakura TAKADA1, Arisa IWABUCHI1, Akari KAWAMATA1, Shin-ichi ISHIOKA2, Toshiaki ENDO2, Tsuyoshi SAITO2

1日鋼記念病院産婦人科, 2札幌医科大学附属病院産科・周産期科

1Dept. of Obstetrics and Gynecology, Nikko Memorial Hospital, 2Dept. of Obstetrics, Sapporo Medical University

キーワード :

【目的】
出生前診断の一つである胎児スクリーニングの大きな目的は,出生前に異常を含む胎児の状態を把握し,ハイリスク症例を抽出して管理する事であり,分娩時期や分娩様式,分娩施設などの決定を含む,適切な周産期管理を行うためにも必要である.全ての症例に,詳細な検査を健診のたびに行う事は現実的には不可能であり,詳細な検査が必要なハイリスク症例をどのように効率的に抽出して行くかが重要になる.そこで我々は,複数の医師による効率的で効果的な胎児スクリーニングを目標として,胎児スクリーニングリストを用いた超音波検査法を導入した.
【方法】
2010年6月より,独自に作成したスクリーニングリストを用いて,全妊婦を対象に系統的なスクリーニング検査を施行した.スクリーニング検査は主に妊娠20週ー24週と妊娠30週前後の2回施行し,正常所見を1項目ずつ確認し,確認できない項目はその旨を明記し,以後の健診で確認する様にした.正常断面が描出されない場合には通常の妊婦健診枠とは別の日時を設定し,精密検査を行った.超音波診断装置は持田シーメンスメディカルシステム社製SONOVISTA C3000(探触子:5.0-9.0MHzセクタ型),およびALOKA社製Prosound α7(探触子: 3.5MHzコンベックス型)を使用した.
【結果】
リスト導入前では各医師でスクリーニング項目や時期が異なり,担当医師が変わる場合には,スクリーニングされずに分娩に至る症例も少なからず存在していた.また,異なる週数において複数回同じ所見を時間をかけて描出する事もあり,効率的なスクリーニング検査とは言えない状況であった.スクリーニングリストを用いることによりDORV,臍帯ヘルニア,十二指腸閉鎖,両側水腎症(腎盂尿管移行部狭窄),TOF(PA with VSD)+MAPCA,臍帯卵膜付着,単一臍帯動脈,胎盤嚢胞,などの疾患を診断しえたが,TAPVD,VSDなどはスクリーニングで拾い上げる事が出来ず,出生後に診断された症例も存在した.
【結論】
スクリーニングリストを用いた産科超音波検査により,スクリーニングすべき検査項目を統一し,効率の良い正常断面の描出に有用であった.今後の課題として,医師間の診断率の格差を小さくする事や,出生前診断としてのスクリーニング検査をどのように説明し,また,異常を見つけた時のカウンセリングをどのような体制で行うかを早急に検討する必要があると考えている.