Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
産婦人科:母体

(S563)

Cushing症候群に常位胎盤早期剥離を合併した1例

A case of pregnant woman with Cushing Syndrome and Placental Abruption

北島 百合子, 吉村 秀一郎, 山崎 健太郎, 荒木 裕之, 増﨑 英明

Yuriko KITAJIMA, Syuichiro YOSHIMURA, Kentaro YAMASAKI, Hiroyuki ARAKI, Hideaki MASUZAKI

長崎大学病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University Hospital

キーワード :

【緒言】
Cushing症候群は,副腎皮質からのコルチゾールの慢性的な分泌過剰によって引き起こされる.妊娠中に診断されることはまれだが,高血圧,耐糖能異常,早産,母体死亡,胎児死亡などのリスクが高くなる.今回,妊娠16週で高血圧と下肢浮腫を主訴に当科を受診し,その後右副腎腺種によるCushing症候群と診断され,妊娠20週で常位胎盤早期剥離をきたした症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は38歳の2回経妊1回経産で,前回妊娠時は異常なく経腟分娩した.35歳頃から下肢の浮腫,血圧の上昇,顔が丸くなってきたのを自覚していたがとくに精査されなかった.36歳から本態性高血圧の診断で近医で経過観察されていた. 最終月経以後妊娠が成立し,近医で経過をみていたが,高血圧・下肢浮腫の増悪を認めたため,妊娠16週5日当科に紹介された.皮下出血斑,皮膚の菲薄化,下肢浮腫,満月様顔貌,および野牛肩が認められ,腹部超音波検査およびMRIでは右副腎に20mmの結節が認められたため,右副腎腺腫が疑われた.デキサメタゾン1mg抑制試験でコルチゾールの抑制を認めず,随時ACTHは完全抑制されていた.以上より,Cushing症候群合併妊娠,右副腎腺腫と診断し,妊娠22週に外科的に右副腎腺腫を摘出する方針とした. 妊娠20週3日,外出血と子宮収縮を認め,経腹超音波検査で胎盤に血腫像を認めたため,緊急入院管理とした.入院後も子宮収縮は持続し,板状硬で,血腫は増大傾向を示し,常位胎盤早期剥離・DIC疑い(産科DICスコア:7点)と診断した.妊娠継続は困難と判断し抗DIC療法,輸血を開始すると同時に頸管拡張を行い,分娩誘発を行ったがDICが進行したため全身麻酔下に緊急帝王切開術を行った.胎盤には血塊の付着を認め,常位胎盤早期剥離であった.術後DICは軽快し退院した.右副腎線種の摘出手術を予定している.
【考察】
Cushing 症候群は副腎皮質からのコルチゾールの慢性的な分泌過剰によって起こる症候群である.原因は,下垂体腺腫(cushing 病)からの過剰なACTH分泌,副腎皮質腫瘍によるコルチゾールの自律性過剰分泌が多い.本症は,様々な症状をきたすが,本例では,満月様顔貌,中心性肥満,野牛肩,皮膚の菲薄化,皮膚線条,高血圧,浮腫などの典型的症状を認めていた.通常,Cushing症候群では,副腎性ステロイドによる性腺刺激ホルモンの抑制によって無排卵になり妊孕性は低下することが多い.一方で,妊娠が成立すると,高血圧,耐糖能異常,妊娠高血圧腎症など様々な合併症をきたす.治療は手術による腫瘍摘出術が原則である.