Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
産婦人科:母体

(S561)

頸管妊娠の3例

Three cases of cervical pregnancy

梅澤 幸一

Koichi UMEZAWA

帝京大学病院産婦人科学

Obstetrics and Gynecology, Teikyo University school of medicine

キーワード :

【はじめに】
子宮頸管妊娠は大量出血に伴い子宮摘出術を余儀なくされる例があり,治療法の選択や手術施行時期の判断に苦慮することが多い.当院では過去6年間に頸管妊娠が3例あり,異なる転機をとったので報告する.
【症例】
症例1は39歳,1G0P,子宮筋腫合併.前医にて凍結胚移植で妊娠が成立.子宮体部及び頸管内にそれぞれ胎嚢を認め,共に胎児心拍を認めたため当院に紹介.カラードプラー法で頸管内の胎嚢周囲の血流は乏しかった.妊娠6週4日,超音波ガイド下に経腟的に頸管内の胎嚢のみ摘出した.摘出後,頸管を前後方向で約20分間圧迫することでほぼ止血した.術後,頸管内に絨毛を思わせる高輝度なエコー像が残存しているが,現在妊娠継続中であり外来で経過を追っている.症例2は39歳,2G0P.自然妊娠し,妊娠6週で初診.胎嚢は子宮体下部に存在し絨毛は峡部から頸管内に及んでいた.カラードプラー法で胎嚢周囲の血流は豊富であった.妊娠11週,胎嚢内にKCLを局注しIUFDとした.子宮動脈塞栓術を施行後,MTX治療を施行した.hCGレベルは陰性化したが,胎嚢周囲と筋層内にカラードプラーにて血流を認めた.この時点で子宮内容除去術を施行したが,子宮頸管から約3000mlの出血があり,子宮頸管内へバルーン留置し,圧迫止血した.続いて,子宮動脈塞栓術を施行したが完全には止血せず,バルーン留置を継続した.翌日,バルーンを抜去したところ,ほぼ止血されていた.以後,経過順調で1年後に再度妊娠し,帝王切開にて出産,生児を得た.症例3は34歳,0G0P.前医にて凍結胚移植で妊娠が成立,胎児心拍を認める胎嚢が子宮峡部に存在.その後,稽留流産となったため,妊娠9週で子宮内容除去術を施行,絨毛が確認された.2週間後,多量出血あり当院に紹介.頸管に約3cmの血流豊富な腫瘤を認め,頸管妊娠後の遺残と診断し,MTX療法施行.hCGレベルが低下したため,外来でfollow upしていたが,突然の大量出血があり入院.この時点で,腫瘤は縮小していたが腫瘤内に血流を認めていた.子宮動脈塞栓術にて止血できた.
【考察】
当科の症例では,頸管妊娠の3例中2例が生殖補助医療(ART)によるもので,もしARTがリスク因子になっているとすれば,今後の増加が予想される.また,2例において頸管内の胎嚢除去術後に絨毛が遺残しており,頸管妊娠の管理をする上で検討を要する課題があると考えた.第1例は児心拍がありながらも妊娠部周囲の血流が乏しく胎嚢摘出によっても出血は少量で止血は容易であった.それに対し,他の2例はhCGレベルが低下した状態でありながら妊娠部周囲の血流が多く,大量の出血に至った.hCGレベルの低下だけではなく,カラードプラー法により胎嚢周囲や子宮頸管の血流を把握することが,出血の予測や治療法決定に有用であると思われた.