Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
産婦人科:胎児

(S560)

胎児仙骨部奇形腫(Altman IV型)の一例

Altman typeIV sacrococcygeal teratoma in fetus:a case report

松本 順子

Junko MATSUMOTO

日本赤十字社医療センター産婦人科

OB&GYN, Japanese Red Cross Medical Center

キーワード :

【はじめに】
胎児仙骨部奇形腫は,腫瘍の発生する位置によって,主に仙骨から外側に発育するI型,内側と外側両方に発生するII型,内部が主で,外部にも発育するIII型,内部のみに発育するIV型と,4つに分類される(Altman分類).このうち今回経験したIV型は非常にまれなタイプである.今回胎内からIV型の仙骨部奇形腫を疑い出生後に確認された症例を経験したため,報告する.
【症例】
39歳1経妊1経産.自然妊娠後,近医にて妊婦健診中,胎児腹部の液体貯留指摘され,妊娠30週1日当院紹介受診.EFBW 1624g(+0.24SD), AFI 17cm総腸骨動脈の間に6cm大の腫瘍性病変を認めた.腫瘍は充実性部分と嚢胞性部分の混在した,表面平滑で,内部に異常血流を認めないものであった.仙骨部体表側に明らかな異常構造物認めず.他,明らかな胎児奇形認めなかった.巨大仙骨部奇形腫IV型を疑い,MRI検査にて,浸潤性の乏しい,仙骨部奇形腫,あるいは腸間膜嚢腫疑いとのこと.妊娠32週0日 入院後,腫瘍による羊水の嚥下困難が原因と思われる羊水増加傾向と,腫瘍の緩やかな増大傾向を認めるも,児はwell-being保たれており,中大脳動脈収縮期血流速度(MCA-PSV)も正常範囲内が保たれ,急激な腫瘍内出血を疑わせる所見や,腫瘍内シャント血流による胎児心不全徴候も認めなかった.腫瘍は横隔膜を圧排しており,出生直後の呼吸管理困難,分娩時の腫瘍内出血の危惧を考え,分娩方針は予定帝王切開の方針とした.妊娠36週6日,予定帝王切開実施.児は,男児2664g, Apgar score(1’分値)8点 (5’)8 臍帯血pH7.35 腹部は全体膨満し,表在静脈の怒張を認めた.気管内挿管の上NICU管理となった.児は挿管管理などによって全身状態安定していた.出生後の超音波検査,MRI,CTより,S3-4レベルから発生した巨大仙尾部奇形腫疑いの診断.日齢2日目に奇形腫切除術施行した.病理検査にて,Sacrococcygeal teratoma,悪性所見は認めなかった.以後外来フォロー中であるが,下肢の可動性は良好で,排尿障害なく現在のところ明らかな再発を認めていない.
【考察】
仙尾部奇形腫はまれな腫瘍であり,出生後早期に摘出すればほとんど再発することのないものであるが,出生後の悪性化があるため,出生2か月が経過すると92%に悪性化所見が認められたとの報告もあり,早期の外科的治療を要する疾患である.IV型の場合,出生後も気づかれず,悪性化してから気づかれることもあるため,注意が必要である.また,hypervascularな腫瘍の場合,心不全から胎児死亡に至ることもあり,胎児期での発見が重要である.今回,胎児期の腹腔内腫瘍としてIV型の仙尾部奇形腫が疑われ,早期にNICU,小児外科的介入を行うことが可能であった症例を経験した.胎児スクリーニングにおいて,腹腔内の腫瘍性病変のスクリーニングも重要であると思われた.