Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
産婦人科:胎児

(S559)

胎内でKlippel-Trenaunay-Weber症候群を疑った一例

a case of Klippel-Trenaunay-Weber syndrome diagnosed in utero

佐道 俊幸, 重富 洋志, 成瀬 勝彦, 小林 浩

Toshiyuki SADO, Hiroshi SHIGETOMI, Katuhiko NARUSE, Hiroshi KOBAYASHI

奈良県立医科大学産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Nara Medical University

キーワード :

【緒言】
Klippel-Trenaunay-Weber症候群は皮膚の母斑や血管腫,静脈瘤,軟部組織(特に下肢)の片側性肥大を3主徴とする稀な疾患である.通常は出生後の外見所見で気づかれることがほとんどであるが,胎内診断が可能であった症例の報告も散見される.今回,胎児超音波検査とMRIにて本疾患を疑い,出生後に本疾患と診断確定した症例を経験したので報告する.
【症例】
母体は40歳代,初産婦.生殖補助医療にて妊娠成立後,近医で妊婦健診を受けていたが,特に異常は指摘されなかった.妊娠25週の健診で胎児の下肢の太さが左右非対称であることが指摘され,当科に紹介受診となった.当科初診時の胎児超音波検査所見は左腎臓周囲に辺縁不整な多嚢胞性腫瘤を認め,さらに外陰部から左大腿にかけて皮下組織の腫大を認めた.心拡大やその他の部位の皮下浮腫などは認めなかった.胎児MRIでは左後腹膜腔にリンパ管腫様の多嚢胞性腫瘤を認め,左大腿皮下組織の肥大を認められた.下肢の軟部組織の肥大とリンパ管腫を認めたことから,Klippel-Trenaunay-Weber症候群を疑った.本疾患では心不全を呈することがあるため,心不全兆候などが認められないかどうかを慎重に観察していくこととした.妊娠経過中は児の成長に伴い,後腹膜リンパ管腫や下肢の肥大は増大していったが,心不全兆候は認められなかった.妊娠39週1日,自然陣痛発来後,分娩停止となり,帝王切開施行,女児,4526g,Ap9-1/10-5娩出した.児は左下肢の肥大,左側腹部から臀部にかけての血管腫,後腹膜腔にリンパ管腫を認め,本疾患と確定診断した.出生後は全身状態良好で退院となったが,今後は成長に伴い下肢の機能障害などに対し対処していく予定である.
【結語】
胎児超音波検査とMRIにて本疾患を疑い,出生後に皮膚の血管腫を認めたことから確定診断にいたった.また,本疾患ではリンパ管腫を合併することも多いとされていることも診断の一助となった.片側性の下肢肥大を認めた際には本疾患を疑うことも必要である.