伊藤 恵子¹, 須田 亜衣子¹, 五十嵐 潔², 石田 秀明³, 渡部 多佳子³, 長沼 裕子⁴

Keiko ITO¹, Aiko SUDA¹, Kiyoshi IGARASHI², Hideaki ISHIDA³, Takako WATANABE³, Hiroko NAGANUMA⁴

¹仙北組合総合病院臨床検査科, ²仙北組合総合病院消化器科, ³秋田赤十字病院超音波センター, ⁴市立横手病院内科

¹Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital, ²Gastroenterology, Senboku Kumiai General Hospital, ³Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ⁴Intemal Medicine, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
現在,腹部超音波検査での診断において,造影超音波検査はなくてはならないものになっている．しかし,多種多様な新技術が随時加わり,個々の新技術を十分に検証できない状態にある．今回我々は,造影超音波検査におけるdual image（造影超音波像とbase line USの同時2画面表示）の意義について検討したので報告する．
【対象と方法】
外来で造影超音波検査を施行した最近の200例を対象にした．造影超音波検査時にdual imageで表示し,1）dual imageの目的として,a）病変の追跡,b）等染病変の位置確認,c）B-mode上不明瞭な病変の位置確認,d） 解剖学的位置関係の把握,の4項目に大別しその使用頻度を算出した．2） dual imageの画質として,a）十分な画質か,b）不十分な画質か,評価を行った．造影超音波は通常の肝腫瘍の造影手順に準じ,dual imageのMI値については,造影超音波像は0.2-0.3,base line USは 0.07-0.11で行った．使用診断装置は東芝社AplioXG,XarioXG,GE社製LogiquE9,中心周波数ともに3〜4MHz．使用造影剤は第一三共,Sonazoid．
【結果】
1）dual imageの目的： a）病変の追跡54例/200例（27％）,b）等染病変の位置確認48/200（24％）,c）B-mode上不明瞭病変の位置確認38/200（19％）,d）解剖学的位置関係の把握60/200（30％）であった．2）dual imageの画質：a）十分な画質148/200（74％）,b）不十分な画質52/200（26％）であった．不十分な画質52例の内訳は,病変細部の観察が不十分45/52（87％）,小病変の追跡不良7/52（13％）であり,いずれもbase line USの画質に不満があった．
【まとめ】
造影超音波像とbase line USを同時に表示することができるdual imageは,背景の画像を消去して観察するamplitude modulation法ではもちろんであるが,pulse inversion法においても,観察領域を確認するために用いられている．造影超音波検査を症例を重ねて検討してみると,dual imageの使用目的が症例に応じて異なると思われた．小病変は呼吸等で観察画面からはずれてしまいやすく,base line USを用いて常に病変が視野内に収まっていることを確認する必要がある．腫瘍が肝実質と同様な染まりを示す,等染病変では,造影超音波像では不明瞭になるため,base line US像をもとに,病変の評価が必要であり,また,B-mode上で病変が不明瞭な症例の場合は,逆に造影超音波像をもとに腫瘍の位置を再確認する必要がある．腫瘍と,胆管,門脈,肝動脈,胆嚢管,肝実質の非腫瘍部などとの関係を詳細に評価したい場合には,それらの解剖学的な位置関係をB-mode像をもとにオリエンテーションをつけながら病変の評価をしていくことが必要である．このように,造影超音波検査 においてdual imageは必要不可欠であると思われる．しかし,造影剤が影響を受けないように 現在,base line USのMI値を低く設定しているが,そのため 通常のB-mode像に比べ画質が劣り,これについては今後の改善が望まれる．