Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
消化器:その他

(S554)

子宮留膿腫に対して超音波内視鏡下ドレナージ術が有用であった一例

A case of pyometra for which endoscopic ultrasound-guided drainage is useful

清野 隆史1, 大塚 裕之1, 森島 大雅1, 仲尾 洋宣2, 前野 直人2, 加藤 統子2, 石原 茂秀2, 長尾 康則2, 石川 英樹1

Takashi SEINO1, Hiroyuki OOTUKA1, Tomomasa MORISHIMA1, Hironobu NAKAO2, Naoto MAENO2, Noriko KATOU2, Shigehide ISHIHARA2, Yasunori NAGAO2, Hideki ISHIKAWA1

1公立学校共済組合 東海中央病院消化器内視鏡センター, 2公立学校共済組合 東海中央病院診療放射線科超音波検査室

1Department of Digestive Endoscopy, Tokai Central Hospital, 2Department of Ragiology, Tokai Central Hospital

キーワード :

症例は90歳女性.平成23年7月,発熱を主訴に当院を受診され,血液検査で炎症反応高値を認めて入院となる.腹部超音波検査にて,骨盤内に境界明瞭で辺縁整な88×53mm大の腫瘤性病変が描出され,内部エコーはモザイク状の等エコーから低エコーを示していた.CTでは膀胱の背側に造影効果を伴う被膜によって覆われた嚢胞性病変を認め,内部にニボーが存在すると共に,子宮頚部との連続性が確認された.発熱,炎症反応高値,画像所見から子宮留膿腫と診断し,抗生剤治療を開始したが,無効であった.当院婦人科にコンサルテーションを行い,経膣的なドレナージを試みたが,子宮頚部の萎縮が強いため不可であり,子宮全摘術が必要との回答であった.90歳と高齢であり,手術による侵襲が大きいことから,十分なインフォームド・コンセントの下で,家族の同意を得て,超音波内視鏡下ドレナージ術を行う方針となる.入院8日後,経直腸的にコンベックス型超音波内視鏡で子宮留膿腫を観察すると,10cm大の境界明瞭で内部不均一な嚢胞性病変であり,ドプラモードで血流シグナルは確認されず,ソナゾイドを用いた造影超音波内視鏡検査でも造影効果は認められなかった.また,一部不均一で器質化した膿瘍を疑わせる部位を認めたが,血流シグナル,造影効果がないことから,腫瘍性病変は否定的と判断した.引き続いて,COOK社製の19G ECHO-TIPを使用して病変を穿刺し,コーヒー牛乳様の膿汁を50ml吸引後,ガイドワイヤーを挿入した.Soehendra 4-7Fr dilatorにて穿刺部を拡張した後,7Fr ENBDチューブを留置して終了とした.膿汁培養検査からはEnterococcus faecalis,Bacterides ureolyticusが検出された.術後経過は良好であり,ドレナージ開始後,翌日には解熱し,5日後には血液データ上,炎症反応は正常化した.また,5日後のCT検査では子宮留膿腫は著明に縮小し,内腔は消失していた.術後13日目にENBDチューブを抜去したが,腹膜炎等の合併症は発症せず,術後23日目に退院となった.子宮留膿腫は閉経後の高齢者や子宮頸部疾患を有する女性を中心に認められる比較的頻度の低い疾患で,子宮腔内の感染に子宮頸部の狭窄や閉塞が加わって子宮腔内に膿が貯留したものである.一般的には帯下や不正性器出血を主訴に婦人科を受診し診断されることが多いが,発熱や腹痛を主訴に受診する可能性もある.治療は子宮頸管の拡張による排膿と抗菌薬の投与が基本である.本症例は,子宮頚部が高度に萎縮していたため経膣的な排膿が不能であり,婦人科医からは開腹による子宮全摘術を勧められた.しかし,患者は高齢でADLも低く,体力も不十分であることから外科的治療に関しては家族も消極的であった.そこで,当科で仮性膵嚢胞に対して経験のある超音波内視鏡下ドレナージ術を子宮留膿腫に対して応用し,成功した.子宮留膿腫に対するこのようなドレナージ術は過去に報告例がなく,低侵襲で非常に有用な治療法と考えられるので,若干の文献的考察とともに報告する.