Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
消化器:消化管・脾臓

(S552)

脾臓毛細血管血管腫の超音波像

Ultrasound imaging of Splenic cord capillary hemangioma

丸山 勝1, 三枝 義信1, 小田 福美1, 鈴木 丈夫2, 田村 浩一3

Masaru MARUYAMA1, Yoshinobu SAEGUSA1, Fukumi ODA1, Takeo SUZUKI2, Koichi TAMURA3

1東京逓信病院臨床検査科, 2東京逓信病院放射線科, 3東京逓信病院病理診断科

1Clinical Laboratory Department, Tokyo Teishin Hospital, 2Radiology Department, Tokyo Teishin Hospital, 3Pathology Department, Tokyo Teishin Hospital

キーワード :

脾臓原発の腫瘤性病変は,稀であり診断に苦慮する場合が多い.今回我々は,脾臓毛細血管性血管腫の症例を経験したのでその超音波像について報告する.症例は31歳男性.主訴・現病歴に特記すべきことなし.スクリーニングの超音波検査で脾臓に腫瘤を指摘した.超音波所見:脾臓に,内部エコーは低ないし等エコーレベルで均質,境界部不明瞭な腫瘤像を認めた.辺縁高エコー帯や低エコー帯は見られず,腫瘤は脾臓下面に突出しhump signを呈していた.パワードプラ(CFM)にて,腫瘤を取り囲む豊富な血流を認め,腫瘤内部に血管の密な構築が認められる特徴的な超音波像であった.CFMの所見から,腫瘤径は5 pと推察された.Bモードでは過誤腫を疑ったが,CFMの所見は過誤腫に合致せず,他の腫瘤性病変の可能性を考えた.造影CT,MRIを行なったが,血管肉腫も否定できず,また脾動脈瘤も認めたため,開腹による脾臓摘出が行われた.摘出標本についての肉眼的及び免疫組織化学を含めた病理組織学的検索により,脾臓毛細血管性血管腫と診断された.考察:脾臓に発現する血管腫の多くは海綿状血管腫であり,その超音波所見は肝臓血管腫と同様とされ,類円形の高エコーレベルな腫瘤像が特徴である.本症例の超音波像の特徴は,内部が低ないし等エコーレベルで境界が不明瞭であることや,CFMで内部に密な血管構築が認められた点が,海綿状血管腫の超音波所見の特徴とは異なっていた.検索し得た範囲での脾臓毛細血管性血管腫の超音波所見の報告は,宮本ら1)の1例のみであった.宮本らの報告による超音波所見は,最大径3cm大の境界部不明瞭・辺縁やや不整・内部エコー不均一の腫瘤とされ,ドプラ検査に関する報告はされていないものの,Bモード所見は,我々が経験した症例とほぼ一致していた.Bモード所見に加え,CFMで得られる腫瘤内部の豊富な血流像は脾臓毛細血管性血管腫の特徴的な所見と考えられた.結語:今回我々は,超音波検査にて脾臓に血流豊富な腫瘤性病変を認め,摘出脾の免疫組織学的検査で脾臓毛細血管性血管腫と診断した症例を経験した.脾臓の多血性の腫瘤としては血管肉腫などがあり鑑別が問題となるが,今後,脾臓に多血性腫瘤性病変を認めた場合,毛細血管性血管腫も考慮する必要があることが示唆された.

【参考文献】
1)宮本 茂樹,高杉 憲三,秦 史壮,ほか:Splenic cord capillary hemangiomaと最終診断しえた脾臓腫瘍の1例:日消外会誌42:1819-1825,2009