Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:症例4

(S537)

繰り返す輸血による心へマクロマトーシスが疑われたピルビン酸キナーゼ欠乏症の一例

Cardiac hemochromatosis caused by repeated blood infusion for congenital hemolytic anemia in the patient of pyruvate kinase deficiency: A Case Report

奥田 真一1, 和田 靖明2, 村田 和也3, 前田 貴子1, 文本 朋子1, 内田 耕資1, 村上 和華子1, 池田 安宏1, 三浦 俊郎1, 松崎 益徳1

Shinichi OKUDA1, Yasuaki WADA2, Kazuya MURATA3, Takako MAEDA1, Tomoko FUMIMOTO1, Kousuke UCHIDA1, Wakako MURAKAMI1, Yaushiro IKEDA1, Toshiro MIURA1, Masunori MATSUZAKI1

1山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学, 2山口大学医学部附属病院先進救命医療センター, 3山口大学医学部附属病院検査部

1Department of Medicine and Clinical Science, Division of Cardiology, Yamaguchi University Graduated School of Medicine, 2Advanced Medical Emergency and Critical Care Center, Yamaguchi University Hospital, 3Division of Laboratory, Yamaguchi University Hospital

キーワード :

症例は34歳女性.出生時よりピルビン酸キナーゼ欠乏症による溶血性貧血を指摘された.繰り返しの輸血が必要であったことから2歳時に脾摘が行われ,その後貧血は改善していたという.2008年(31 歳時),動悸を主訴に他院を受診したところ,重症貧血(Hb4.5g/dl)を指摘され,鉄キレート剤を内服の上,2ヶ月に一度の赤血球輸血が開始された.2010年8月に出産後より輸血の頻度が1ヶ月に1度となったが,そのころに行われた心エコーでは軽度の心拡大はあるものの,駆出率(EF)は正常下限で保たれていた.2011年8月より動悸,夜間の呼吸困難を主訴に精査目的で当科に紹介.急性心不全の診断で同日緊急入院となった.身体所見では 眼球結膜に貧血,眼球結膜は黄染,皮膚に色素沈着があり,頚静脈怒張,肝腫大と下肢浮腫がみられ,心音ではIII音を聴取した.胸写で心胸郭比の増大と肺血管陰影の増強がみられ,心電図はII, III, aVf, V6で陰性T波がみられた.心エコー所見は左室拡張末期径(LVDd)64mm,EF30%で,下大静脈の呼吸性変動は低下しており,心肥大はなかったものの2010年検査時と比して明らかな左室の拡大,EFの低下と心房の拡大がみられた.Mモード像ではB-B’stepを認め,左室流入血流速波形は拘束型パターンを呈し,組織ドプラのE’が低下,E/E’は31と著明に上昇しており,左室拡張能の低下と,左室拡張末期圧の上昇が示唆された.全身CTでは頭部,肝臓,心臓で濃度上昇があり,繰り返す輸血と原疾患により全身に鉄沈着を来したと思われた.本人の承諾がとれず心筋生検は施行できなかったが,心エコー,CT所見に加えて心臓MRIではT2強調像で心筋に信号低下がみられ,病歴と合わせて心ヘモクロマトーシスが強く疑われた.入院後,薬物療法による心不全コントロールを行い改善傾向であったが,左室拡大,EFの低下は残存した.ヘモクロマトーシスは鉄が肝臓,心臓などの実質臓器に沈着する疾患で,心臓では心筋内への鉄沈着により心エコー上は拡張型心筋症に類似した像を示す.また左室拡張能は低下し,拘束型パターンを呈するとされる.心エコー所見を含め若干の文献的考察を加えて報告する.