Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:症例3

(S531)

肺平滑筋肉腫の心筋内転移の診断,経過観察に経胸壁心エコー検査が有用であった一例

Echo cardiographic observation of cardiac metastasis from pulmonary leiomyosarcoma : A case report

平田 有紀奈1, 林 修司1, 山田 博胤1, 2, 西尾 進1, 冨田 紀子2, 發知 淳子2, 弘田 大智1, 玉井 利奈1, 中川 摩耶1, 佐田 政隆1, 2

Yukina HIRATA1, Shuji HAYASHI1, Hirotsugu YAMADA1, 2, Susumu NISHIO1, Noriko TOMITA2, Junko HOTCHI2, Daichi HIROTA1, Rina TAMAI1, Maya NAKAGAWA1, Masataka SATA1, 2

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院循環器内科

1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital

キーワード :

【症例】
60歳,男性.2008年9月に職場健診で胸部異常陰影を指摘され,PET-CTを施行したところ,肺野の多発結節陰影にFDGの集積を認めた.腫瘤に対しCTガイド下経皮的生検を行うも確定診断がつかず,2008年11月に胸腔鏡補助下肺切除術を受け,多発性肺平滑筋肉腫と診断された.肉腫に対し,first line,second lineの化学療法を施行したが共に奏効しなかったため,2011年3月,third lineの化学療法開始にあたり心エコー検査が依頼された.心エコー検査では,左室・左房の拡大は認めず,左室駆出率は65%で収縮能は正常,僧帽弁口血流速波形は正常パターンであり下大静脈径の拡大も認めず,心機能としては化学療法を問題なく行える状態であった.しかし,心尖部寄りの心室中隔に約1.5cm大のlow echoicな腫瘤を認め,さらに腫瘤内部には拡張期優位の血流が観察された.この腫瘤は2008年の心エコー検査では指摘されておらず,多発性肺平滑筋肉腫の心筋内転移が疑われた.その後,心臓MRIが施行され,心エコー検査と同様に前壁中隔に約1.5cm大のT2強調画像で高信号を呈する腫瘤を認めた.2011年5月,心エコー検査にて心筋内腫瘤の経過観察を行ったところ,腫瘤の大きさに変化はなかったが,新たに腫瘤内にlow echoicな内腔形成を認めた.内腔内には血流は観察されず,内腔は腫瘤の壊死像を観察しているものと思われた.再度,心臓MRIでも経過観察を行い,腫瘤内の内腔の描出はできないものの,2011年3月と比較し腫瘤の大きさには変化を認めないことが確認できた.
【考察】
肉腫の発生頻度は悪性疾患全体の1%未満であり,その中でも平滑筋肉腫は悪性度が高く遠隔転移を伴うことが多い.また,多発性の遠隔転移が生じた場合の2年生存率は30%程度とされている.本例は深刻な病状であることに加え,心筋内転移も認められたため慎重な経過観察が必要であった.心筋内腫瘤に関しては,大きさの変化だけではなく,内部構造の変化や血流動態の観察も腫瘤の進行度を評価する上で重要であった.心エコー検査は無侵襲で繰り返し検査が施行でき,本症例では心臓MRIと同等以上の診断精度で,経過観察が行えたと考える.
【結語】
心筋内転移をきたした多発性肺平滑筋肉腫の1例を経験した.腫瘤の経過観察および腫瘤内部の性状評価,血流動態の把握に心エコー・ドプラ法が有用であった.