Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
循環器:症例1

(S526)

多発性の大動脈縮窄症を合併した大動脈二尖弁の一例

Multiple regions of coarctation of the aorta associated with bicuspid aortic valve in a 74-year-old female

沖 都麦1, 田中 秀和2, 松本 賢亮2, 漁 恵子2, 山本 哲志1, 今西 孝充1, 林 伸英1, 河野 誠司1, 川合 宏哉2, 平田 健一2

Tsumugi OKI1, Hidekazu TANAKA2, Kensuke MATSUMOTO2, Keiko RYO2, Tetsushi YAMAMOTO1, Takamitsu IMANISHI1, Nobuhide HAYASHI1, Seiji KAWANO1, Hiroya KAWAI2, Ken-ichi HIRATA2

1神戸大学医学部附属病院検査部, 2神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野

1Laboratory division, Kobe university hospital, 2Division of Cardiovascular Medicine, Department of Internal Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
74歳,女性.
【主訴】
特になし(心機能精査)
【現病歴】
高血圧,大動脈二尖弁による大動脈弁狭窄症,および大動脈縮窄症にて,他院で外来加療されていた.心不全症状は認めていなかったが,2010年11月には60%であった左室駆出率が,2011年7月には40%台,10月には30%台と徐々に低下してきたため,精査加療目的で当院に紹介入院となった.
【入院後経過】
当院入院時の経胸壁心エコー図検査では,軽度の大動脈弁狭窄症を認めていた(連続の式による弁口面積1.6cm2,平均左室-大動脈間圧較差16mmHg).左室拡張末期径は45mm,左室収縮末期径は34mm,左室駆出率は41%であった.左室壁運動はびまん性に低下していたが,左室肥大は認めていなかった.また,2次元ならびに3次元経食道心エコー図検査では,rapheを有さない左右型の大動脈二尖弁であることが明瞭に観察された(図A,B).6時方向の交連部に石灰化をみとめ,planimetry法で算出された大動脈弁口面積は1.35cm2であった.3次元構築された胸腹部造影CTでは3か所の大動脈の屈曲を認めた(図C,D).1つ目は右鎖骨下動脈分岐直下であり(図C,D矢印),縮窄遠位部の大動脈は40mmと紡錘状に拡大していた.2つ目は胸部大動脈に(図C,D点線矢印),3つ目は腎動脈分岐部直下に認められた(図C,D二重線矢印).また,心臓カテーテル検査では,腎動脈分岐部直下の縮窄部位で48mmHgの最大圧較差を認めた.なお,上下肢左右血圧に大きな差を認めなかった.
【考察】
大動脈二尖弁は頻度の高い先天性心疾患の一つであり,様々な心血管奇形を合併すると報告されている.なかでも大動脈縮窄症は大動脈二尖弁の約10%に合併すると報告されている.しかしながら,大動脈縮窄症は幼少期に指摘され修復される例が多く,本症例のように74歳と高齢で初めて発見される例は珍しい.また多発性に縮窄病変が観察されることもまれである.今回,大動脈二尖弁に多発性の大動脈縮窄症を合併し,経過観察中に,急激に左心機能の低下がみられた症例を経験したので,文献的考察を踏まえて報告する.