Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

ポスター
基礎:基礎

(S517)

Over-determinedシステムによる変位計測精度の向上およびスペックルの低減

Increase in displacement measurement accuracy and speckle reduction using over-determined system

炭 親良1, 2, 石井 陽介2, 山崎 直人1

Chikayoshi SUMI1, 2, Yousuke ISHII2, Naoto YAMAZAKI1

1上智大学理工学部情報理工学科, 2上智大学大学院理工学研究科情報領域

1Information and Communication Sciences, Sophia University, 2Faculty of Science and Technology Information Science, Sophia University Graduate school

キーワード :

【目的】
2次元アレイトランスデューサ使用時の関心領域の高速スキャンのために平面波送波が行われている.我々の場合においては,1つは横方向変位を計測するために,1次元アレイ使用時を含め,偏向した平面波を使用することを提案しており,生成されたビーム角度を高分解能に計測(BA法: Beam Angle Method)してそのビーム方向の変位を高精度に求め,その上で方向のわかっている任意方向の変位を求めることのできる方法を報告している(ASTA: A STeering Angle) (Rep Med Imag).また,変位ベクトル計測には,その偏向した平面波を使用するにあたり,交差する方向に複数の平面波を同時または連続して送波し,これらを重ね合わせることにより横方向変調(LM: Lateral Modulation)を行い(JJAP, 2008),例えば,我々の開発した多次元自己相関法(MAM: Multidimensional Autocorrelation Method)を使用して変位ベクトルを計測することを報告している.また,1つの平面波送波においてスペクトル周波数分割法(SFDM: Spectra Frequency Division Method)と共に横方向低周波スペクトルを除去することにより実現できる横方向変調(LM)も報告している(Rep Med Imag).凹型と凸型開口のアレイトランスデューサを使用する場合は,関心領域へ一括送波すればよいし,波面を設計して実現してもよい.つまり,同様に,上記の計測が可能である.但し,それらのいずれの計測精度も,平面波送波ではなく送信フォーカシングを行った場合に比べて低い.上記多次元自己相関法では,独立した複数の局所スペクトルを使用しており,それらをコヒーレント加算すると横方向変調イメージングが得られ(JJAP, 2008),インコヒーレント加算するとスペックルの低減効果があることを報告している(Rep Med Imag).
【対象】
上記のそれらの変位計測と,通常の開口面前方方向の変位計測(すなわち,ビーム方向の変位計測の応用)とにおいて,必要以上の数の送波を行い,理論的にはover-determinedなエコーデータを使用して計測を行うことを報告する.Over-determinedなシステムをSFDMにより生成する場合においては,スペクトルの分割方向や分割数等について考察した.
【方法】
弾性率の異なるつめものを含む寒天ファントムを対象にして,上記の方法の実行可能性を確認した.変位に加えて,歪や弾性率まで求め,計測精度を確認した.ファントムは,トランスデューサに対して,深さ方向または横方向に圧を加えた.スペックルの低減効果は,強散乱体を含むファントムにおいて確認した.
【結論】
Over-determinedなシステムを実現することにより,通常のビーム方向変位計測においても精度が向上した.これまでに,ビーム方向(縦方向)に分割した場合に計測精度が向上することを報告している(Acoust Sci Tech, 2009)が,今回は,ビーム方向と直交する横方向に分割した場合の効果が確認された.それらの分割したスペクトルと分割無しのスペクトルの併用も効果的であった.また,他の変位ベクトル計測等においても,同様に,効果があったが,送信フォーカシングではなく,上記の平面波送波時において特に効果的であった.使用する各々のスペクトルによる計測精度が高い場合は最少二乗法が有効であり,計測精度の低いもの同士の組み合わせにおいては重ね合わせ平均理が効果的であった.スペックル低減効果についも詳細に報告する.