Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科

(S507)

下肢静脈エコーが診断の契機となった骨肉腫の1例

A case of Osteosarcoma diagnosed by ultrasonography

三木 之美1, 井上 久子1, 松野 浩司1, 廣辻 和子1, 石川 昌利2, 朴木 寛弥3, 本田 伸行4

Yukimi MIKI1, Hisako INOUE1, Kouji MATSUNO1, Kazuko HIROTSUJI1, Masatoshi ISHIKAWA2, Kanya HOONOKI3, Nobuyuki HONDA4

1医真会八尾総合病院臨床検査科, 2医真会八尾総合病院消化器内科, 3奈良県立医科大学病院整形外科, 4寺元記念病院画像診断センター

1Department of Clinical Laboratory, Ishinkai Yao General Hospital, 2Gastroenterology, Ishinkai Yao General Hospital, 3Orthopedic surgery, Nara Medical University, 4Center of Image section, Teramoto Memorial Hospital

キーワード :

【はじめに】
骨肉腫は全骨腫瘍の約11%を占め,原発性悪性骨腫瘍のなかでは最も頻度が高いといわれているが,発生頻度は100万人に2人程度とまれな腫瘍である.今回我々は,下肢静脈エコー時に骨腫瘍を指摘し,骨肉腫と確定診断された1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
【症例】
40歳代.男性
【主訴】
右下腿腫脹と痛み
【現病歴】
腰部脊椎管狭窄症にて近医整形外科に通院中
【経過】
20XX年3月中旬より右下腿腫脹と熱感を自覚し,近医整形外科を受診.歩行時疼痛も出現してきた為,近医再受診にて右下腿静脈瘤が原因と疑われ,当院血管外科へ紹介となった.
【来院時身体的所見】
右腓骨頭あたりに硬結を触知,静脈瘤はごく軽度(分枝型)であった.
【血液検査所見】
ALP 917IU/L,CRP 0.28mg/dl,WBC 6610/μl
【下肢静脈超音波所見】
硬結部に一致して筋肉内に辺縁低エコー帯を有し,内部に石灰化を伴う非常に不均一な低エコー腫瘤を認めた.周囲との境界が比較的明瞭な分葉状の腫瘤として描出され,内部には豊富なドプラ血流が観察された.低エコー腫瘤は病変長8cmにわたる巨大腫瘤としてとらえられ,腓骨を取り巻くように存在していた.以上の所見より骨または筋肉由来の悪性腫瘍を疑った.
【右下腿X線像】
右腓骨骨幹端に境界不鮮明で骨膜反応を伴う骨破壊像がみられ,骨外腫瘤陰影も認めた.
【造影CT所見】
病変内には石灰化ないし骨化が明瞭に認められ骨形成を伴う腫瘤が描出されており,CT angiographyでは血管が豊富に発達しているのがわかった.
【MRI所見】
T1強調像で低信号,T2強調像では低信号から高信号まで非常に不均一な信号強度を呈していた.ガドリニウム造影T1強調脂肪抑制像で骨外病変部は不均一な造影効果を認め,脛骨の骨髄内にも異常信号が見られた.
【経過】
腓骨由来の悪性腫瘍が強く疑われため,他院へ紹介となった.他院において骨生検で右腓骨原発の通常型骨肉腫と確定診断された.多発性骨転移,脛骨浸潤,深部静脈内腫瘍塞栓の遠隔転移も認めた.抗がん剤による治療が導入されたが,効果不十分のため外科的手術は行わず,治療を継続していたが,翌年年5月に永眠された.
【まとめ】
エコーでは腫瘤の原発部位の鑑別に苦慮したが,画像を再検討したところ,骨皮質ラインが途切れている骨断裂像が描出されており,骨腫瘍と指摘することが可能であった.本症例の骨肉腫は骨腫瘍であり,骨を直接評価できればエコーはより有用であるが,骨などの硬組織に対しては,音響陰影により内部構造や皮質後方の情報が得られないため,エコーが適応となるのは,皮質が破壊され骨外腫瘤が存在する場合が多いとされている.しかし,骨の表面は描出可能なため表面形状から周辺の軟部組織との位置関係を明確にすることができると思われる.エコーが骨の輪郭描出に優れていることをふまえ,積極的に観察することが診断に有用であると考えられた.また,検査対象領域以外の疾患に遭遇することも念頭において検索しなければならないことを痛感した.