櫻井 健一^{1, 2}, 榎本 克久¹, 藤崎 滋², 平野 智寛¹, 前田 哲代^{1, 2}, 松本 京子^{1, 2}, 長島 沙樹¹, 原 由起子^{1, 2}, 植田 雄一^{1, 2}, 天野 定雄¹

Kenichi SAKURAI^{1, 2}, Katsuhisa ENOMOTO¹, Shigeru FUJISAKI², Tomohiro HIRANO¹, Tetsuyo MAEDA^{1, 2}, Kyoko MATSUMOTO^{1, 2}, Saki NAGASHIMA¹, Yukiko HARA^{1, 2}, Yuichi UEDA^{1, 2}, Sadao AMANO¹

¹日本大学　医学部外科学系　乳腺内分泌外科分野, ²医療法人社団　藤崎病院外科

¹Division of Breast and Endocrine Surgery, Department of Surgery, Nihon University School of Medicne, ²Department of Surgery, Fujisaki Hospital

キーワード :

【目的】
乳腺葉状腫瘍は再発を繰り返すと悪性度を増すという報告もあり,手術時に十分なマージンを確保することが重要とされている．われわれは葉状腫瘍の手術時における切除範囲決定についての超音波検査の有用性について検討する．
【対象】
針生検で葉状腫瘍と診断され,過去15年間に手術を施行し,胸筋温存乳房切除を行わず,腫瘍摘出術を施行し,術中超音波検査で切除範囲を決定した,記録と予後が明らかな34例を対象とした．
【方法】
術中超音波検査で腫瘍の全周の辺縁より1cmのマージンをとって手術を行うために,超音波ガイド下にピオクタニンを注入してマーキングした後,手術を行った．術後の病理組織標本で腫瘍辺縁から切除断端までのマージンについて検討を行った．
【結果】
対象症例の全例が女性であり,平均年齢は40±14.2歳．発生部位は右側16例,左側18例であった．全例が初発症例で単発病変であり,同側多発病変や両側多発病変は認めなかった．腫瘍径は0.9cmから5.3cmであり,平均3.2±1.0cmであった．切除標本の病理組織診断は良性病変25例,境界病変6例,悪性病変3例であった．全例が病理組織学的に切除断端は陰性であった．腫瘍上面のマージンは平均0.9±0.3cm．腫瘍水平面のマ-ジンは0時方向1.0±0.3cm,3時方向1.0±0.2cm,6時方向1.1±0.3cm,9時方向1.1±0.2cmであった．腫瘍下面のマージンは1.8±0.8cmと1cmを大きく超えていた．
【結語】
腫瘍の水平面と腫瘍上面において,術中超音波検査による切除範囲の決定は有用であった．腫瘍下面では後方エコーによる影響と色素注入方法の問題もあり,切除検体の切除範囲が大きくなってしまう傾向があった．腫瘍後方への超音波ビームの入れ方や色素の注入方法に検討が必要であると考えられた．