Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:体表臓器

(S489)

リアルタイム光音響イメージング法による熱傷診断

Diagnose of burns by real-time photoacoustic imaging

伊田 泰一郎1, 保坂 智也1, 川口 康1, 齋藤 大蔵2, 川内 聡子3, 佐藤 俊一3

Taiichiro IDA1, Tomoya HOSAKA1, Yasushi KAWAGUCHI1, Daizo SAITO2, Satoko KAWAUCHI3, Shunichi SATO3

1株式会社アドバンテスト新企画商品開発室 STeLSプロジェクト, 2防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門, 3防衛医科大学校防衛医学研究センター情報システム研究部門

1New Concept Product Initiative, ADVANTEST CORPORATION, 2Division of Basic Traumaology, National Defence Medical College Research Institute, 3Division of Biomedical Information Science, National Defence Medical College Reserch Institute

キーワード :

1.はじめに
光音響イメージング法は,血液などの光吸収体の深さ分解イメージングが可能であることから近年精力的に研究が行われている.同イメージング法は生体にパルス光を照射し,その光吸収により生じた熱弾性波(光音響波)を検出し画像化する.目的とする光吸収体に選択的に吸収される波長の励起光を用いることにより,高コントラストのイメージングが可能となる.これまでに光音響イメージング法を用いて,血液分布の深さ情報から熱傷の深度診断が可能であることが報告されている.[1] しかし従来は単検出素子での測定であったため,リアルタイムで広範囲の診断が行えないという問題があった.今回我々はアレイ型素子を用い,リアルタイムで測定可能な光音響イメージング装置を開発し,熱傷の診断特性について評価を行った.
2.実験装置・方法
励起光源には波長532 nmのQスイッチNd:YAGレーザーを用い,計測長約10 mmのアレイ型プローブと組み合わせて光音響信号を取得した.照射エネルギー密度は1.6 mJ/cm2,繰り返し周波数は100 Hzである.これは,レーザー安全性に関するJISC6802の皮膚に対するMPEの基準を十分に満たしている.フェイズドアレイで画像化を行っており,フレームレート10 fpsで診断を行うことが可能である.励起光量のごく小さい条件で,人の最大皮膚厚さに相当する約3 mmまでの皮膚組織を診断可能である.本実験では,測定対象としてラット背部にWalker-Manson法により浅2度,深2度,3度熱傷を作製し,それぞれの画像データを取得した.
3.実験結果
図1に健常皮膚と上記3種の熱傷モデルに関する受傷24時間後の光音響断層画像を示す.浅2度熱傷では0.1-0.3 mm,深2度熱傷では,0.4-0.5 mm,3度熱傷では1 mm以上の深さまで血流が遮断されていることが示されている.熱傷深度に応じた血流遮断領域を捉えられたことから,本光音響イメージング装置によって熱傷のリアルタイム診断が可能であると考えられる.
4.まとめ
リアルタイム光音響イメージング装置を開発し,熱傷診断に使用できることを確認した.今後は新規開発中のレーザーを用い,システムの更なる小型化を図る予定である.
[1]S Sato, M Yamazaki, D Saito, H Tsuda, Y Okada, M Obara and H Ashida:J Trauma.2005;59:1450-1456