Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:体表臓器

(S488)

手指軟部組織感染症に対する超音波診断の有用性-形成外科領域での超音波診断-

Usefulness of ultrasound in the management of hand infection-Ultrasound in the plastic surgery field-

佐次田 保徳1, 上田 真2

Yasunori SASHIDA1, Makoto UEDA2

1沖縄県立中部病院形成外科, 2沖縄県立中部病院外科

1Department of Plastic Surgery, Okinawa Prefectural Chubu Hospital, 2Department of Surgery, Okinawa Prefectural Chubu Hospital

キーワード :

【目的】
近年,超音波診断装置の発達に伴い,リウマチなどの炎症疾患やガングリオンなどの腫瘤性病変に対する手指における超音波診断の報告が散見される.今回,手指感染症の急性期において,特に,手術の適応を決定するに際し,超音波による診断を試みたので報告する.
【対象】
2011年6月より9月まで,当科にて診療した手指感染症3例で,急性期より当科が診療し,超音波検査が手術適応決定に関わった症例を対象とした.
【方法】
初診時に超音波検査を行い,皮下の炎症あるいは膿瘍を低エコー所見として,またガス像を高エコー所見として診断した.また,感染巣の首座における腱及び腱鞘を観察,腱鞘内異常低エコー領域のあるものを腱鞘炎と診断した.また,近傍の関節と上記の所見の連続性を検査した.手術適応に関しては,上記の超音波所見だけではなく,症状,理学的所見を鑑み,総合的に判断した.
【結果】
症例1.23歳男性,調理場で仕事中転倒し,ガスバーナーの取ってによる右小指球部の裂創を受傷.翌日同部より排膿を認め来院した.発熱無く,Kanavel sign陰性であった.超音波所見にて,創部皮下に膿瘍形成を認めたが,化膿性腱鞘炎の所見を認めず,抗生物質静注及び外来での創部洗浄,排膿により治癒した.症例2.21歳男性.喧嘩により右拳が相手の歯に当たり所謂Clench fist injuryを受傷.右環指手背のMP関節部の痛み,腫脹にて来院した.診察上,伸筋腱断裂や炎症所見は認め無いが,MP関節との交通が危惧された.超音波所見では,伸筋腱腱鞘内に低エコー領域なく,MP関節に所見を認めなかった.外来で洗浄し,創処置を行い,抗生剤静注にて治癒した.症例3.59歳女性.既往に慢性関節リウマチがあり,プレドニンを服用している.左母指手背MP関節部に犬咬傷を負い,同部の腫脹,熱感を認め来院した.診察上Kanavel signは陰性であったが,超音波所見にて皮下膿瘍及び長母指伸筋腱の化膿性腱鞘炎が疑われ緊急手術となった.皮下膿瘍及び腱鞘内をドレナージし,抗生剤静注を行い治癒した..
【考察】
手指の軟部組織感染症の中には皮下膿瘍の他,手指に特有な化膿性腱鞘炎,化膿性関節炎などの病態が含まれ,ドレナージ手術の時期を逸すると,重篤な後遺障害を残しかねない.そのため手術の適応決定が重要である.ほとんどの場合,それらは発熱,痛みなどの症状や,Kanavel signに象徴される圧痛,受動痛,腱鞘領域の介達痛などにより総合的に判断される.今回,上記の他,超音波により,皮下膿瘍所見に加え,腱鞘内低エコー所見,関節との交通所見の有無を判断し,より適切な手術適応の決定が可能であったと思われる.