Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:腎泌尿器1

(S482)

ナットクラッカー症候群に対して左腎静脈にステント留置術を施行した1例

A Case of Nutcracker Syndrome Who Was Treated by Left Renal Venous Stenting

田端 強志1, 荒川 直之1, 金 徳男1, 神谷 直人2, 笠井 ルミ子3, 粕谷 秀輔3, 長谷部 光泉3, 東丸 貴信4

Tsuyoshi TABATA1, Naoyuki ARAKAWA1, Tokuo KON1, Naoto KAMIYA2, Rumiko KASAI3, Syusuke KASUYA3, Terumitsu HASEBE3, Takanobu TOMARU4

1東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理機能検査部, 2東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科, 3東邦大学医療センター佐倉病院放射線科, 4東邦大学医療センター佐倉病院循環器センター

1Depertment of Clinical Physiology, Toho University Medical Center Sakura Hospital, 2Depertment of Urology, Toho University Medical Center Sakura Hospital, 3Depertment of radiology, Toho University Medical Center Sakura Hospital, 4Depertment of Cardiovascular Center, Toho University Medical Center Sakura Hospital

キーワード :

【はじめに】
ナットクラッカー症候群(左腎静脈捕捉症候群)は左腎静脈が腹部大動脈と上腸間膜動脈の間に挟まれることによって左腎静脈圧が亢進し血尿や腰痛をきたす症候群である.
【症例】
26歳,女性.2010年8月に血尿,貧血,ナットクラッカー症候群疑いで近医より紹介受診し,膀胱鏡,左尿管鏡を施行するも腫瘍性病変認めず,その後経過観察していた.しかし,2011年5月持続する血尿,貧血悪化のため再び受診され,ナットクラッカー症候群に対して外科的治療を含め検討されたが,まずは血管内治療を希望され,今回左腎静脈ステント留置目的で入院.
<超音波検査(術前)>
腹部大動脈と上腸間膜動脈間の最狭部径(Dn)は1.4mm, ドプラでの最大血流速度(PVn)は115cm/s,拡張した遠位側の左腎静脈径(Dd)は8.5mm, ドプラでの最大血流速度(PVd)は48cm/sであり,径および最大血流速度の比はDd/Dn=6.1, PVn/PVd=2.4であった.
<血管内治療>
右大腿静脈アプローチにて施行.左腎静脈造影で腎静脈は圧排狭窄し,腎静脈拡張,左卵巣静脈や腰静脈など著明に発達した側副路を認めた.左腎静脈狭窄部前後の圧較差は10mmHgであり,12mm×40mm の自己拡張型ステント(Luminexx Stent)を2個留置した.留置後,圧較差と側副路は消失し,下大静脈への良好な流入を確認し合併症なく終了した.
<超音波検査(術後2か月)>
腹部大動脈と上腸間膜動脈間の径(Dn)は9.7mm, ドプラでの最大血流速度(PVn)は30cm/s,遠位側の左腎静脈径(Dd)は10.2mm, ドプラでの最大血流速度(PVd)は29cm/sであり,径および最大血流速度の比はDd/Dn=1.1, PVn/PVd=1.0であり,術前と比較してPVn,PVdの低下とDd/Dn,PVn/PVdの低値を認めた.
<治療経過>
ステント留置後1ヶ月程腰痛がみられたが,現在は消失し,血尿,貧血共に改善傾向を認めている.術後から3ヶ月間バイアスピリンを継続した.術後4ヶ月経過するがステント内血栓など術後の合併症は今のところ認めていない.
【まとめ】
左腎静脈にステント留置したナットクラッカー症候群の1例を経験した.超音波検査はナットクラッカー症候群における診断の一助となり,ステント留置後の経過観察に有用と思われる.