Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:脳と胎児発育

(S477)

出生後SGAと診断された児220症例における児体重推定についての後方視的検討

Retrospective analysis about antepartum ultrasound estimation of birth weight in 220 Small for gestational age (SGA) infants.

田沼 有希子, 渡邉 典芳, 青木 宏明, 住江 正大, 梅原 永能, 林 聡, 名取 道也, 左合 治彦

Akiko TANUMA, Noriyoshi WATANABE, Hiroaki AOKI, Masahiro SUMIE, Nagayoshi UMEHARA, Satoshi HAYASHI, Michiya NATORI, Haruhiko SAGO

国立成育医療研究センター周産期センター 産科

Center for maternal-fetal and neonatal medicine, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【目的】
Small for gestational age (SGA) 児は,非SGA児に比べ周産期死亡率や精神発達遅延の発症が高率であり,適切な周産期管理によるその発症予測は重要である.出生児においては2010年より新しい在胎週数別出生時体格標準値が導入されている(日本小児科学会雑誌 114巻8号 1271-1293, 2010).出生後のSGAの診断は10パーセンタイル以下を基準に診断される.一方胎内での発育不全 (FGR) は胎児超音波計測推定体重 (EFBW) において-1.5SDを基準に診断される.周産期管理においてはEFBWを用いて方針決定を行うが,現在まで本邦での児の新基準によるSGA診断とEFBWによるFGR診断を比較検討した報告はない.今回,我々は出生後にSGAと診断された児の妊娠中のEFBWおよびそのSD scoreを後方視的に検討し,出生前のFGR診断と生後のSGA診断と関連をみることを目的とした.
【対象・方法】
2009年6月から2011年6月に当センターで分娩となった3715例のうち出生体重が-1.3SD以下であった症例は423症例であった.このうち単胎で,児に構築異常を認めなかった生産症例220症例について診療録を用いて検討した.検討は,対象症例における妊娠18〜22週(20週),妊娠28〜32週(30週),妊娠34〜36週(36週),および分娩前1週間以内(出生直前)でのEFBWおよびSDで行った.FGR診断については,胎内でEFBW≦-1.5SDと診断された症例と定義した.また出生体重のSDについては板橋らの報告に基づき算出した(日本小児科学会雑誌 114巻8号 1271-1293,2010).
【結果】
対象症例220例において,年齢は34.8±4.6(歳)(mean±SD),初産/経産は131(59.6%)/89(40.4%),出生週数は38.2±3.2(週) (mean±SD),出生体重の平均2244±524 (g)(mean±SD)であった.対象症例220例においてUSGのEFBWは30週,36週,分娩1週間以内のいずれにおいて出生体重と強い関連を示した.EFBWと出生体重の係数の推定値Coefficient estimate (CE)は30週で0.86 (95%CI: 0.62-1.1,p<0.001),36週で0.54 (95%CI: 0.43-0.65, p<0.001),出生直前では0.82 (95%CI: 0.76-0.88, p<0.001)であった.またEFBWで算出されたSDと出生体重のSDは20週,36週,出生直前の値で強く相関した.CEについては20週で0.29 (95%CI: 0.20-0.39, p<0.001),36週で0.40 (95%CI: 0.30-0.50, p<0.001),出生直前では0.44 (95%CI: 0.37-0.51, p<0.001)であった.一方,妊娠中のFGR診断でSGAを予測する感度は,分娩1週間以内で76/181 (42.0%),妊娠34-36週で60/170 (35.3%),妊娠28-32週で23/192 (12.0%),妊娠18-22週12/180 (6.7%)であった.
【結論】
各時期におけるEFBWおよびそのSDは,出生体重および生後のSDを強く予測させることが分かった.SGA診断の感度が低い原因としては,係数の推定が1より小さかったことによると考えられた.今回の検討により,EFBWのSDと出生体重によるSDの間の検討が進められることでSGAがより正確に診断されると考えられた.