Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:脳と胎児発育

(S475)

出生前に脳梁欠損症と診断された5症例

Perinatal diagnosis of agenesis of the corpus callosum: case reports

長谷川 ゆり, 築山 尚史, 河野 通晴, 城 大空, 増崎 雅子, 吉田 敦, 吉村 秀一郎, 増﨑 英明

Yuri HASEGAWA, Takashi TSUKIYAMA, Michiharu KOUNO, Oozara JO, Masako MASUZAKI, Atsushi YOSHIDA, Syuichiro YOSHIMURA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University

キーワード :

【緒言】
脳梁は左右の大脳半球を連絡する主要経路であり,成熟した脳梁は妊娠17週までに形成される.脳梁欠損は独立した所見のこともあるが,染色体異常や先天性代謝異常を含めた他の奇形や遺伝症候群を合併することが少なくない.胎児のルーチン超音波検査では横断像方向のスキャンが行われるため脳梁を描出することはできないが,脳梁欠損症に多く認められる側脳室後角の拡大はたやすく識別できる.今回,胎児超音波で脳室拡大を指摘されて当科に紹介となり,脳梁欠損症と診断した5症例について報告する.
【対象】
当科で2009年から2010年の2年間で出生前に脳梁欠損症と診断した症例は5例であり,全症例が紹介症例であった.
【結果】
前医で異常を指摘されたのは28週から34週であり,中央値は29週であった.紹介理由は5症例とも腹部超音波検査での脳室拡大であった.当科で行った超音波でも全症例に側脳室の拡大と透明中隔腔の欠損を認めたため脳梁欠損症を強く疑った.MRI検査も全症例で行っており,脳梁欠損症と診断した.全症例で経腟分娩を行っている.脳梁欠損以外の超音波異常所見を分娩前に指摘されていたのは1症例のみで,羊水過多を認めていた.他の4症例に明らかな異常を認めなかった.2011年12月の時点における児のフォローアップ期間は2カ月から2年6カ月であり,中央値は2年1カ月であった.3症例は合併奇形なく発達も良好である.出生後に耳介低位や腹直筋離開を認めた症例では精神発達遅滞と運動発達遅滞が疑われている.また,出生前から超音波異常所見を認めた症例は出生後多発小奇形を認めたため染色体検査を行ったところ,4番染色体長腕部分欠失であった.原因は不明だが,生後2カ月に自宅で突然死した.
【考察】
脳梁欠損症は側脳室の拡大により気付かれることが多い.Piluらは脳梁欠損と診断された35例の胎児のうち34例で側脳室が10mm以上であったと報告している.今回の検討でも全症例が脳室拡大により紹介されている.診断は胎児超音波に加えMRIが特に有用である.また,合併奇形の有無が児の予後を左右するとされ,出生前の正確な診断を行うことは母親や家族へインフォームドコンセントを行う上でも重要である.
【結論】
脳梁欠損症の診断には超音波およびMRIが有用であった.合併奇形の有無が児の予後に直結するため詳細な検査が重要である.