白井 みゆき¹, 田中 ゆみ¹, 八幡 剛喜², 川瀧 元良³

Miyuki SHIRAI¹, Yumi TANAKA¹, Gouki YAHATA², Motoyosi KAWATAKI³

¹やはたウィメンズクリニック超音波検査室, ²やはたウィメンズクリニック産婦人科, ³神奈川県立こども医療センター周産期医療部新生児科

¹Yahata Obstetrics-and-gynecology clinic, Ultrasound test room, ²Obstetrics-and-gynecology, Yahata Obstetrics-and-gynecology clinic, ³The department of a perinatalcare part newborn infant, Kanagawa Perinatal center

キーワード :

【はじめに】
今回一次スクリーニングにおいて修正大血管転位症を疑い高次医療施設に紹介になり,精査の結果修正大血管転位症の確定診断がついた症例を経験した．単独の修正大血管転位症の症例報告はきわめて稀であるため報告する．
【症例】
1経妊0産　29週の検診時心エコースクニーリングを施行した．他の心奇形を伴わない修正大血管転位症を疑ったが修正大血管転位症は心室中隔欠損や,心室中隔欠損＋肺動脈狭窄の合併が多いため高次医療施設へ紹介になり確定診断後,高次医療施設での管理,分娩になった．スクリーニング妓時,胎児は骨盤位であったが心臓は比較的に見やすい胎位だった．腹部断面4chamber view,5chamber view,3Vview,3VTviewを観察する一連のスクリーニング検査の過程において所見をまとめた．
【腹部断面】
胃泡は左側にあり,下行大動脈は脊柱の左側に,下行大静脈は脊柱の右側に描出された．
【4chamber view】
肺静脈は左側の心房の注いでいる．心尖部は正中に向いている,房室弁は左側心室の方が右側の心室より心尖部よりに付着している．左側の心室の心尖部寄りにmoderator bandが描出され左側の心室が解剖学的右室として描出された．
【5chamberview】
右側の心室の流出路が脊柱方向に走行し5chamber viewを構成している．右側の心室は解剖学的左室として描出され流出路は左右に分岐する主肺動脈とつながっていた．
【3Vview所見】
2本の大血管は左右の心室からつながっているが交叉しておらず,並走しているため3本の血管が1列に並ぶ3Vviewの描出は困難だった．左側の心室につながる大動脈は確認された主肺動脈より前胸壁側を走行していた．
【3VTview所見】
動脈管と大動脈弓の太さはほぼ同じであるが動脈管のほうがやや長く観察された．以上の所見より房室不一致,心室大血管不一致が認められた．
【考案】
修正大血管転位症は,全先天性心疾患のなかで0.1％と非常に稀な疾患であり,特に単独の修正大血管転位症はこれまで胎児診断の報告はきわめて少ない．血液の流れ方自体には問題がないため新生児期にはなんら症状がでない．心雑音等の理学所見にも異常を呈さないため小児期の検診でも発見が困難である．しかし成人期になって三尖弁閉鎖不全や房室ブロックが年齢とともに重症化していく疾患であるとされているクリニックでの一次胎児心スクリーニングにより修正大血管転位症を疑い高次医療施設に紹介することで新生児期→小児期→成人期に至るまでのフォローアップが可能となり,患者のQOLを高めることにつながったと思われる．今回の症例を通して胎児心スクリーニングの重要性を確認できたと考えられるので報告した．