Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児異常

(S469)

羊水過多を呈し妊娠29週に無下顎耳頭症の診断に至った一例

A case which presented the polyhydramnios and resulted at diagnosis of otocephaly in 29 weeks of pregnancy

玉石 絢香, 五味 陽亮, 成田 達哉, 松村 英祥, 村山 敬彦, 高井 泰, 齋藤 正博, 高木 健次郎, 馬場 一憲, 関 博之

Ayaka TAMAISHI, Yousuke GOMI, Tatsuya NARITA, Hideyoshi MATSUMURA, Yoshihiko MURAYAMA, Yasushi TAKAI, Masahiro SAITOU, Kenjiro TAKAGI, Kazunori BABA, Hiroyuki SEKI

埼玉医科大学総合医療センター産婦人科

Obstetrics and gynecology, Saitama Medical Center

キーワード :

【緒言】
羊水過多の原因はさまざまであり,消化管閉鎖や筋・神経原性疾患,染色体異常,胎児貧血,胎盤血管腫などが挙げられる.今回,羊水過多を呈し無下顎耳頭症の診断に至った一例を経験したので,報告する.
【症例】
29歳,0回経妊0回経産.合併症として喘息がありフルチカゾンプロピオン酸エステル(吸入ステロイド製剤)で加療中であった.妊娠初期より前医で妊婦健診施行されており,特に問題なく経過した.妊娠28週5日に腹部膨満感と嘔気を主訴に前医を受診した際,AFI(amniotic fluid index) 40cmの羊水過多をみとめた.妊娠29週0日に当院を紹介受診.この際,AFI 35cmの羊水過多と胎児の顔貌異常をみとめ,また,子宮収縮頻回であったため,羊水過多および切迫早産の診断で緊急入院となった.入院後はアンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム配合剤6g/day,塩酸リトドリン50μg/minで治療を開始.並行して3D超音波検査での精査を行なったところ,両目の間隔が短く,鼻と上唇が挙上,両耳が下に下がっており,胎児重症無下顎耳頭症の診断となった.両親に児の予後を説明したところ,積極的な切迫早産の治療は行なわず,胎児適応の帝王切開や新生児の積極的な蘇生処置は行なわない方針となり,妊娠29週5日に切迫早産の治療を終了,翌29週6日に一時退院した.妊娠30週3日に陣痛発来し再入院.同日,児娩出に至った.児は1304g,Apgar score 1分値2点/5分値1点,生後21分で早期新生児死亡となった.
【まとめ】
耳頭症は70,000児に一例ほどの発症頻度と言われている.一部には原因物質としてテオフィリン,ベクロメタゾン(合成副腎皮質ホルモン),サリチル酸塩などの報告もみられるが,そのほとんどは突発的に発症する.出生後の救命・生存は困難であり,非常に稀な疾患ではあるが,羊水過多の原因として小顎症と併せて鑑別する必要がある.なるべく早期に発見するためにも,心臓などの内臓がみえ始める妊娠18〜20週頃に胎児の重点的なスクリーニング検査を施行することが肝要であると考える.